ファイナンス 2020年5月号 No.654
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(3)国税不服審判所における審理ア 審理の主体審査請求は国税不服審判所長宛てに行われ、これに対して国税不服審判所長が裁決を行うが、公正性を担保するため、調査・審理と議決までは合議体に委ねられ、裁決はその合議体の議決に基づき行われる。合議体は通常2名の国税審判官と1名の国税副審判官で構成され、合議に当たってはそれぞれ独立した立場で十分に意見を出し合い、審議を尽くした上で議決を行う。更に、国税不服審判所長並びに大規模支部である東京支部及び大阪支部の首席国税審判官には、発足以来現在まで裁判官又は検察官出身者が就任し、東京支部、大阪支部等の都市部の支部には裁判官又は検察官出身の国税審判官が配置されているほか、弁護士や税理士、公認会計士などの職にあった民間の専門家も、調査・審理を担当する国税審判官に特定任期付職員として採用している。現在、合議体を構成する国税審判官の約100名のうち半数程度がこうした民間の専門家出身となっている。イ 審理の方法の特色国税不服審判所は、専門家による簡易迅速な権利救済手続であることから、事件の審理を行うため、職権による調査権限を有している。審理の範囲について、国税不服審判所は、原処分によって確定された税額が処分時に客観的に認められる正当な税額を上回るか否かを判断するために必要な事項の全てに及ぶとする「総額主義」を前提としつつも、昭和45年の国税通則法改正法案採決時の参議院大蔵委員会の附帯決議を踏まえ、その事務運営においては、争点主義的運営を標榜し、審査請求人及び原処分庁双方の主張により明らかとなった争点に主眼を置いた審理(調査)を行っている(一般的な審理の流れは図表3参照)。参議院大蔵委員会附帯決議(昭和45年3月24日)《抜粋》「政府は、国税不服審判所の運営に当たっては、その使命が納税者の権利救済にあることに則り、総額主義に偏することなく、争点主義の精神をいかし、その趣旨徹底に遺憾なきを期すべきである。」図表4 最近の審査請求の発生状況 (単位:件)申告所得税等源泉所得税等法人税等相続税・贈与税消費税等その他徴収関係合計21年706575631791,390153443,25422年705444292291,206124593,08423年806574533071,5551003033,58124年521513621492,254472143,59825年321233491281,825541552,85526年49956314172754741612,03027年514363341807211171962,09828年55872504172937102352,48829年910944652161,106271352,95330年1,038495571851,11481533,104図表5 最近の審査請求の処理状況 (単位:件)全部認容一部認容棄 却却 下取下げ計認容割合21年1432411,6203042852,59314.8%22年1533262,2896403093,71712.9%23年1192851,9942852842,96713.6%24年1503012,4823813043,61812.5%25年731632,4811971593,0737.7%26年1171222,3881651882,9808.0%27年371471,6152892232,3118.0%28年491921,2581912691,95912.3%29年541481,8401862472,4758.2%30年771392,3101362612,9237.4%14 ファイナンス 2020 May.SPOT

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