ファイナンス 2020年5月号 No.654
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国税不服審判所の前身は、昭和24年のシャウプ勧告に基づき、課税処分に対する「異議処理機構」として昭和25年に国税庁及び国税局の附属機関として設置された「協議団」である。協議団は、納税者の不服に対して税務署等の執行機関とは別の第三者的、客観的立場で公平に審理に当たるという、当時の不服審査制度にはなかった全く新しい考え方を導入したものであり、その後20年間にわたり納税者の正当な権利の救済を通じ、我が国の申告納税制度の定着とその発展に大きく貢献してきたと評価されている。しかしながら、「協議団は国税局長の下にあり、自ら裁決権を有しないことから、直税部、調査部等のいわゆる主管部の意見に押され、納税者に納得のいく裁決がなされない。また、国税局長の下にある協議団としては、当然、国税庁長官の通達に拘束される。」という批判もあった。このような批判に応えて、税制調査会では、協議団に代わるべき新しい審理・裁決機構について検討が行われ、自ら裁決権を有する国税不服審判所を国税庁の附属機関(昭和59年には国家行政組織法等の改正により「特別の機関」となる。)として設けることを答申した。これを受けて国会に提出された「国税通則法の一部を改正する法律案」が第63回国会で可決・成立し、他の行政分野に類例を見ない執行機関から独立した不服申立処理機関としての国税不服審判所が昭和45年5月1日に発足した。国の行政組織の中には「特別の機関」として様々なものがあり、国税不服審判所は検察庁、海難審判所とともに、司法機能と関係する機能もしくは準司法機能またはこれと関係する機能を有するために高度の独立性を有している機関として位置付けられている。3国税に関する不服申立手続続いて、国税に関する不服申立制度の概要について説明する(図表2参照)。納税者が更正処分や滞納処分など国税に関する法律に基づく処分を受け、その処分に不服がある場合には、処分の通知を受けた日の翌日から起算して3か月以内に、処分庁である税務署長等に対する再調査の請求又は国税不服審判所長に対する審査請求を選択して行うことが可能である。再調査の請求が選択された場合、税務署長等は処分が正しかったかどうかを見直し、その判断を行い(再調査決定)、納税者に通知する。納税者は、その決定後の処分になお不服があるときは、国税不服審判所長に対して審査請求をすることができる。この場合、再調査決定書の送達を受けた日の翌日から起算して1か月以内に行わなければならない。審査請求書が提出されると、国税不服審判所では、処分が適正であったかどうかを判断するため調査・審理を行い、その結果(裁決)を裁決書謄本により審査請求人と処分をした税務署長等に通知する。なお、税務署長等が行った処分より審査請求人にとって不利益に変更することはできないこととされている。裁決を受けた審査請求人がその裁決後の原処分の内容になお不服がある場合には、裁決があったことを知った日の翌日から6か月以内に裁判所に訴訟を提起することができる。また、審査請求をした日の翌日から起算して3か月を経過しても裁決がない場合は、裁決を経ないで裁判所に訴訟を提起することができる。 ファイナンス 2020 May.11国税不服審判所の50年SPOT

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