ファイナンス 2020年4月号 No.653
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各地の話題【写真(4)】現在の庁舎4海外における日本酒ブーム到来京都の名所、旧跡については、語りつくされており、皆さま方に今さらながらご紹介することがはばかられますが、近年、経済連携協定の締結により輸出振興策が強化され、海外における日本酒ブームが高まっています。貿易統計によれば日本酒の全国の輸出額は2010年から2019年まで10年連続で過去最高を更新し、特に昨年は、日EU経済連携協定の発効を受け、ワインの輸入が増えた一方、日本酒の輸出も増え、関税撤廃の効果が出てきています。その輸出の一翼を担っているのが伏見に所在する酒蔵メーカーであり、今回はその伏見の酒の由来などについて少しご紹介します。5京都伏見は水どころ、酒どころ。一升の酒を造るのに、八升の水が必要といわれる酒造りにおいて、豊富な地下水に恵まれた伏見はかつて「伏水(ふしみず・ふくすい)」と呼ばれていたほどに、質の高い伏流水が豊富な地で、桃山丘陵をくぐった水が水脈となって、山麓近くで湧水となってあらわれるため、日本を代表する酒どころとなりました。伏見の地下水はカリウム、カルシウムなどバランスよく含んだ中硬水であり、酒造りにとって理想的な水質なのです。そのすぐれた地下水の伝説を持つのが御香宮神社で、その名前の由来も、社伝によれば数千年前、境内に香り高い清泉が湧き出し、朝廷がその湧水のおいしさに感嘆したという逸話をもとに、その名を賜ることになったと言い伝え、「日本名水百選」に選ばれている「御香水」などの多くの名水伝説がここ伏見には残されています。【写真(5)】御香宮神社【写真(6)】同神社境内の御香水石碑6伏見の酒蔵の昔と今ここ伏見に多くの酒蔵が集まるようになったのは、豊臣秀吉が伏見城を築城し、大きな城下町として礎を築いたことに始まります。それ以降、宿場町、また水運の要衝として賑わいを増し、江戸時代初期(1600年代半ばの頃)には、伏見には80を超える酒蔵があったとの記録があり、こうして伏見の地は日本の酒どころとして、天下にその名が広まっていったことと想像されます。現在、伏見酒造組合に加盟している酒蔵・蔵元は23カ所あり、これらの各酒蔵・蔵元の努力によりこの伏見の地でおいしい日本酒が生まれています。【写真(7)】伏見の酒蔵風景 ファイナンス 2020 Apr.75連載各地の話題

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