ファイナンス 2020年4月号 No.653
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ことができますが、それを引き出すことができるかどうかは気持ち次第なのです。また、アマチュアで勝っても負けてもいい、というのと、仕事で勝ち負けの責任を問われるのとは大違いです。そのため、仕事第一で考え、そのためにどうしたらいいのかを考えれば考えるほど、道が開けてくるのではないかと思います。私は、ノルマを自分なりに作って、それに向かって、どうしたらいいだろうかと常に考えてきました。そのことが結果的にホームラン数の増加に繋がっていったのではないかと思っています。8.ライバルの設定次にライバルについて申し上げます。我々がプレーした時代には、野村克也さんとか、今もテレビで活躍している張本勲さんなどがいました。彼らはすごい成績を出していました。私も「あいつには負けたくない」という思いで頑張りました。自分にそういったものを設定することは大事なことだと思います。私は長嶋さんをライバルだとは思いませんでしたが、ライバルというのは自分で想定すればいいのです。「今日の対戦相手の4番打者に負けたくない」などでもいいのです。何かやるのに自分を奮い立たせてくれるものを自分で作ることも大事なことだと思って私はプレーしていました。9.支えてくれた家族や友人の大切さそれから、自分を支えてくれたのはやはり家族です。一番心配してくれるのです。自分では「今日、こういう理由で打てなかった」というのが分かるのですが、家族はそれが分からない。ただ私の周りでオロオロというか、腫れものに触るようなことしかできないのです。そういったこともあり、家族や両親に対しては、彼らのためにも頑張らないといけない、という思いが自分の原動力になりました。それから友達についてです。耳が痛いことも言ってくれる友達というのはありがたいですね。中学時代からの友達などは何でも言ってくれます。今でも大事にしています。お互いに思ったことはどんどん言い合うのです。私が慢心しないで野球に取り組むことができたのも良い友達がたくさんいたからだと私は思っています。人間一人では何もできません。友達がいたり、家族がいたりすればこそなのです。また、話は変わりますが、私は野球一筋で、遠征も多く普段は家にいないため、子供の教育は妻に任せていました。しかし、父親になるというのは、ただ結婚して子供ができたから自然と父親になるものではないということに気が付きました。父親には責任があります。父親はどうすべきか、ということも考えさせられました。ただ稼げばよいのではなくて、父親として教えるべきこと、父親だからやれることについて、先輩から気付かされました。では、我が家の場合どうしようかと考えました。我が家の子供は女の子が3人です。女の子のことはよく分からない点もありましたが、「娘たちにはあまり贅沢ないい思いをさせないようにしよう」と決めました。妻とは特にこういった話はよくしました。私は野球選手の中では良い給料をもらっていましたから、贅沢をさせようと思えばそうできたのです。しかし、それはのちのち彼女たちに良くないだろうと思い、しつけの一環としてどうすべきかを考え、贅沢はさせませんでした。10.健康とチャレンジ精神私は今年80歳になります。胃の手術を行いましたが、幸い良い形で生きてくることができました。私はまだ自分の足で歩くことができます。できることなら最後まで自分の足で歩きたいと思い、エレベーターやエスカレーターがあってもなるべく歩くようにしています。歩くことに限らず、仕事でもずっとチャレンジ精神でやってきましたけれども、やった人とやらない人の差は絶対出てくると思います。体は正直ですから、歩く、あるいは階段を2段まとめて登るとか、そういうことをやると、やったとおりに体は動くようになってくれるのです。皆さんの中には健康について意識する年代になった方もいると思います。何かを自分に課す、何かを乗り越えていく、こういうことは年齢に関係なくずっと続けていってほしいなと思います。60 ファイナンス 2020 Apr.連載セミナー

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