を設定することを推進しているものだが、SBTiのもとで意欲的な削減目標を設定することにコミットした企業は世界で300超に達している。他にも、Renewable Energy 100%(RE100)は、事業で使用する電力の100%を再生可能エネルギーにより発電された電力にする取組みを推進しているが、こちらも世界で約230の企業が参加している。このように持続可能な社会の実現に向けて、企業も脱炭素経営に向けて舵を切りはじめていることが分かる。企業や地方自治体等がグリーンプロジェクトに必要となる資金を調達するために発行する債券であるグリーンボンドの発行も右肩上がりに増加している。世界のグリーンボンドの発行額は2015年の418億ドルから2019年には2,575億ドルにまで達した。債券の発行の増加は、投資家のニーズの高さの裏返しであり、実際、筆者が保険会社で債券運用を担当していた頃に感じていたことだが、投資家のESG投資のニーズの高さはすさまじいものがあった。今後も気候変動に対する意識の高まりから発行は増え続けることだろう。3.おわりに世界の気候変動対応は進展しているように見えるが、各国で対応にばらつきもあり、環境情報開示や環境金融、環境経営の発展はまだ道半ばであると思う。ただ、これから欧州を中心とした世界の気候変動への対応は、ますます加速していくことは間違いない。本稿では触れていないが、欧州では、フォンデアライエン欧州委員長のもと、2050年までに温室効果ガス排出ゼロを掲げた新たな戦略である「グリーンディール」が公表された。EU(European Union)が自らの支出や保証等により、今後10年間でサステナブルな投資に1兆ユーロの資金を動員することを目指す計画を含んでいる。ドイツも昨年、気候変動対策目標の達成に向けて政策パッケージを打ち出した。このように政府が気候変動対策を主導していくことで前述した経済のグリーン化はより一層進んでいくだろう。日本においても、気候変動対応というグローバルな潮流をしっかりと捉え、政府や機関投資家、企業等が一体となって迅速かつ効果的な対応を実施してもらいたい。気候変動問題は、いつ何が起こるか正確に予測できない不確実なものを相手にしなければならないが、その中にこそ次のイノベーションや成長を生むチャンスがある。気候変動について、必要に迫られたから対応するのではなく、ビジネスや産業立地としての日本の地位を高めるための前向きなチャンスと捉えてもらいたい。(注)文中、意見に係る部分は全て筆者の意見である ファイナンス 2020 Apr.53コラム 海外経済の潮流 127連載海外経済の 潮流
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