ファイナンス 2020年4月号 No.653
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この点に関し、我々は、IMFの債務上限ポリシー及び世銀グループの持続可能な開発金融ポリシーの見直しの文脈の中で、新たに生じつつある債務脆弱性に対処するための「様々な角度からのアプローチ」の実施について、担保付貸付の慣行の分析を深める作業のアップデートを含め、IMF及び世銀グループによるアップデートを期待する。我々は、IMF、世銀グループ及びその他の国際開発金融機関(MDBs)に対し、債務の記録・監視・報告、債務管理、公的財政管理、国内資金動員の分野における債務者の能力強化のための取組を継続することを求める。我々は、「G20持続可能な貸付に係る実務指針」の実施に関するIMF及び世銀グル-プのノートで強調されている課題についての議論を前進させていく。我々はまた、国際金融協会の「債務透明性のための任意の原則」の実施に関し、データ保存先を特定する取組を含め、アップデートを期待する。我々は、低所得国(LICs)の債務に関してIMF、世銀グループ及びパリクラブによって現在行われている取組と、債権者たる新興国のより幅広い関与に向けたパリクラブにおける継続した取組を支持する。出張者小話世界有数の原油産出量を誇る、中東のイスラム原理主義国家、サウジアラビア。名前は聞いたことはあっても、訪れたことがある人はほとんどいないのではないか。実際、昨年10月までは、長らく観光ビザの発給が停止しており、今でも観光で訪れる人はほとんどいない。国内では厳格なイスラム法解釈に基づく統治が行われ、女性は数年前まで自動車の運転すら許されず、今でも9割近くが真っ黒なアバヤで目以外全身を覆っている。日本から、ドバイを経由して17時間。中東の王国サウジアラビアは遠い。空港に降り立って、まず目に入るのは、広大な砂漠である。聞けば、850km先のサウジアラビア第二の都市、ジェッダまで、一本の木も生えていない広大な砂漠が延々と続くという。リヤドも、砂漠の上に作られた計画都市である。しかし、そんな砂漠の真っただ中にあって、リヤドは絢爛豪華な現代都市であった。今回の会場となったのは、キング・アブドゥルアズィズ国際会議場。もともと王家の宮殿だったところを、払い下げられたらしい。オイルマネーにあかせて贅の限りを尽くした中東・ヨーロッパ折衷式の大宮殿は、お伽の国に迷い込んだかのように美しかった。長い廊下には小型自動車ほどの巨大なシャンデリアがいくつも吊り下げられ、競うように輝いている。4階建のビルがすっぽり収まりそうな高い丸天井には、美しい文様が彫られ、色とりどりに塗り飾られている。豪華で、それでいて上品な、素晴らしい宮殿だった。ビューイングルームで必死でメモ取りしている時も、コミュニケドラフティングのさなかに廊下を走り回っている時も、見上げれば世界でここにしかない眺めが広がっている。間違いなく当代有数の見事な建築であり、現代のヴェルサイユ宮殿といえるような会議場だった。観光客にはもちろん開放されておらず、大臣級の会議でもなければ使われない会議場。サウジアラビアでもう一度G20が開かれでもしない限り、二度と訪れることはないだろう。世界一の金持ち王国だからこそ実現できる、この世のものとは思えない宮殿での国際会議を目に焼き付けて、アラビア出張は終わった。32 ファイナンス 2020 Apr.G20財務大臣・中央銀行総裁会議の概要SPOT

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