ファイナンス 2020年4月号 No.653
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2020年2月22日から23日にかけて、サウジアラビアの首都リヤドにおいて、G20財務大臣・中央銀行総裁会議(以下、「G20」)が開催された。日本からは麻生副総理兼財務大臣と黒田日本銀行総裁が出席し、2日間にわたり、世界経済、インフラ投資、国際租税、デジタル通貨等、広範な分野にわたって議論が行われた。G20は、昨年12月1日より、サウジアラビアが議長国を務めており、今回は、サウジアラビア議長下で最初の財務大臣・中央銀行総裁会議だった。2020年のG20の議長国を務めるに当たりサウジアラビアは、Enhancing Access to Opportunities for All(全ての人々の機会へのアクセス向上)をはじめ、いくつかの優先議題を設定している。今回の会議の主たる成果は、サウジアラビアの優先議題を中心とした年間アジェンダの設定と、今後1年間の議事進行スケジュールについて、大臣レベルで議論・承認できたことである。以下、主な議論の概要を紹介したい。1 世界経済G20では通例、個別の議題とは別に独立したセッションを設け、世界経済の現状と見通しについて各国財務大臣・中央銀行総裁の意見を交換することとなっている。今回のG20は、昨年10月のワシントンでの会議以来、4カ月ぶりに各国財務大臣が一堂に会して世界経済を議論する場であった。世界経済については、昨年12月に米中貿易交渉の「第一段階の合意」が結ばれ、貿易を巡る緊張は緩和の兆しが見られている。しかし、足元では、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が急拡大しており、世界経済へ影響を与えるリスクとして急浮上している。今回のG20でも、議論は新型コロナウイルスに集中した。会議後に承認されたG20コミュニケでは、世界経済について「2020年及び2021年に緩やかに上向くことが見込まれる一方、見通しに対する下方リスクは根強い」との2019年6月G20福岡会議の認識を踏襲した。特に、新型コロナウイルスについて、監視を要するグローバルなリスクの中で唯一具体的に記載した。その上で、これらの下方リスクに対処するため、更なる行動をとる用意があり、引き続き、全ての利用可能な政策手段を用いることを表明した。(参考) 20か国財務大臣・中央銀行総裁会議声明 (仮訳)(抜粋)1.2019年末に安定化の兆しが見られた後、世界経済の成長は2020年及び2021年に緩やかに上向くことが見込まれる。この回復は、緩和的な金融環境の継続及び貿易を巡る緊張についてのいくつかの緩和の兆しによって支えられている。しかしながら、世界経済の成長は鈍いままであり、地政学的な及び残り続ける貿易を巡る緊張や政策に関する不確実性からくるリスクを含む、見通しに対する下方リスクは根強い。我々は、新型コロナG20財務大臣・中央銀行総裁会議の概要(2020年2月22日~23日、於:サウジアラビア・リヤド)国際局国際機構課長 緒方 健太郎/国際機構課G20係長 出口 文哲28 ファイナンス 2020 Apr.SPOT

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