ファイナンス 2020年3月号 Vol.55 No.12
76/84

1雲南市の概要雲南市は、島根県の東部に位置し、南部は広島県に接しています。総面積は東京23区の9割(553.18km2)、人口約3万8千人、高齢化率36.5%の日本の25年先の高齢化社会をいく典型的な中山間地域です。ヤマタノオロチ退治を中心とした出雲神話の舞台であるとともに、国宝に指定された銅鐸やたたら製鉄など、地域特有の歴史や文化が根付いています。2「日本で一番チャレンジにやさしいまち」これは、平成30年10月24日に行われた第197回国会において、安倍首相の所信表明演説で、本市をご紹介いただいたフレーズです。雲南市は平成16年11月1日、大東町・加茂町・木次町・三刀屋町・吉田村・掛合町の6町村が合併して誕生しました。人口減少、高齢化が進む中、まちの魅力を高める「人材の育成・確保」を地方創生の柱に据え、子ども、若者、大人の全世代が地域課題と向き合い、これを解決するための様々なチャレンジに取り組んでいます。ベースは自らの地域を自らの手で良くしていく地域自主組織による課題解決型の住民自治(大人チャレンジ)です。子どもチャレンジでは、学校教育と社会教育を掛け合わせた、保幼小中高一貫したキャリア教育により、自己有用感を醸成し、地域への愛着を高める取り組みを行っています。若者チャレンジでは、「幸雲南塾(人材育成プログラム)」を通じて、志ある若者たちがつながり、地域課題解決に向けた活動が活発化しています。「幸雲南塾」は、塾卒業生が中心となり結成されたNPO法人おっちラボが事務局を運営しています。2018年度までに延べ120名以上の卒業生を輩出し、およそ60名の新規雇用と、およそ3億円の経済波及効果を創出しています。その取組は、2016年にプラチナ構想ネットワークより、プラチナ大賞・総務大臣賞を受賞しました。その幸雲南塾卒業生の取り組みをいくつかご紹介します。幸雲南塾の4期卒業生である、(株)Community Careは在宅医療空白地域に、訪問看護ステーション「コミケア」を開設しています。若手看護師3名で始まったチャレンジは、2020年には14名に拡大し、訪問看護だけではなく、訪問リハビリにも領域を広げながら、チャレンジを続けています。写真(1) 訪問看護ステーション「コミケア」また、7期卒業生である、Community Nurse Company(株)は、病院や診療所といった臨床看護の現場ではなく、地域に根を下ろし、暮らしの身近な場所で活動をする「コミュニティナース」という日本に前例のない仕事を創り出しました。コミュニティナースは今や日本全国に広がり、創業者の矢田明子さんチャレンジの連鎖による持続可能なまちづくり―雲南ソーシャルチャレンジバレー―雲南市政策企画部政策推進課 主幹鳥谷 健二雲南市72 ファイナンス 2020 Mar.連載各地の話題

元のページ  ../index.html#76

このブックを見る