ファイナンス 2020年3月号 Vol.55 No.12
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非製造業のなかから、Berlingieri et al.(2018)がサービス業として用いた分類を抽出した。表3は、抽出したデータに関する、企業規模別の記述統計量を示している。労働生産性をみると、10人未満の企業の標準偏差が極端に大きくなっていることから、特に企業規模が10人未満のデータに外れ値が存在する可能性が高い。この点については、以下の分析での留意点となる。(2)サービス業の企業規模別の業種の分布表1の産業分類表でもわかるように、サービス業は製造業に比べると業種のばらつきが大きい。そのため、本稿の分析で取りあげたサービス業のうち、企業規模別にどの業種がどの程度の割合で含まれているかを明らかにしたものが図1である*11。図1をみると、本稿で用いるサービス業のデータには、・250人以上500人未満までの規模は「卸売業」の割合が大きい・500人以上の規模では、「小売業」、「宿泊業、飲食サービス業」の割合が他の規模よりも大きく、「卸売業」の割合が小さいという特徴があることがわかる。よって、以下では、サービス業については、上記のような産業分布がある*11) 陸運業、水運業及びその他の運輸業を「運輸業、郵便業」、リース業及びその他の物品賃貸業を「物品賃貸業」、宿泊業及び飲食サービス業を「宿泊業、飲食サービス業」と業種を集約して表記している。*12) 本文中にある法人企業統計の従業員数の説明(上記2.2(2))にあるように、法人企業統計では、「臨時職員及びパートの職員の人員の算出に当たっては、総従事時間数を常用従業員の平均就業時間で割り、四捨五入した整数の人数を用いて」記入することになっている。そのため、企業規模が250人以上の企業群で、臨時職員及びパート職員が多いと、賃金で見た場合は下がる可能性が考えられる。ことに留意する。3.分析結果3.1 結果(1)(プロット図)(1)企業規模と賃金の関係企業規模と賃金の関係を確認したものが、図2(平均値)と図3(中央値)である。両方の図とも同じ傾向を示している。製造業は規模が大きくなればなるほど、賃金が高くなっている。一方、サービス業は、図2(平均値)は従業員数が100人以上250人未満をピークにそれ以上の規模になると低下しているが、図3(中央値)は250人以上500人未満をピークにそれ以上になると賃金水準がやや低下する傾向がある。この低下する理由として考えられるのは、(1)図1でもみられたように、500人以上の規模では卸売業よりも賃金が低い小売業の割合が多いこと、(2)臨時職員やパート職員が多いことが考えられる*12。製造業とサービス業を比較すると、図2(平均値)も図3(中央値)でも、250人未満まではサービス業の方が製造業よりも賃金が高いが、従業員数が250人以上になると製造業がサービス業を上回っている。(2)企業規模と労働生産性の関係企業規模との労働生産性の関係を確認したのが図4(平均値)と図5(中央値)である。図4(平均値)は各企業の規模分類ごとの平均をとったものであるが、特に小規模企業群の平均が上振れている。これは上記表2 2018年度の法人企業統計のデータについて2018年度のデータに含まれている企業数23,453社欠損値を含む企業を除いたデータ数20,767社うち製造業6,613社うちサービス業8,908社それ以外の非製造業5,246社表1 産業分類の対比表Berlingieri et al.(2018)の選定業種法人企業統計の該当業種卸売、小売、自動車・バイク修理卸売業、小売業、その他のサービス業運輸・倉庫陸運業、水運業、その他の運輸業宿泊、飲食サービス宿泊業、飲食サービス業出版、オーディオビジュアル、ブロードキャスティング情報通信業テレコミュニケーションIT・他の情報サービス法律・会計活動その他の学術研究、専門・技術サービス業科学研究開発広告・市場調査・その他専門技術活動、獣医活動広告業、その他の学術研究、専門・技術サービス業事務・補助サービスリース業、その他の物品賃貸業、職業紹介・労働者派遣業、生活関連サービス業、その他のサービス業(注)法人企業統計の業種分類は、『平成30年度 法人企業統計調査 記入要領』(金融業、保険業以外の法人用)p.19-23を参照。(出所)『平成30年度 法人企業統計調査 記入要領』(金融業、保険業以外の法人用)を基に作成。 ファイナンス 2020 Mar.65シリーズ 日本経済を考える 98連載日本経済を 考える

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