ファイナンス 2020年3月号 Vol.55 No.12
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コラム 経済トレンド69大臣官房総合政策課 調査員 村田 亮/志水 真人退職給付制度の動向本稿では、近年の日本の確定給付型の退職給付制度(以下、「DB」という。)の動向について考察した。企業年金について・日本における退職給付(一時金・年金)制度の実施状況を企業規模別にみると、企業規模が大きくなるほど実施割合が高くなっており、企業年金制度を導入している割合も高くなっている(図表1)。・企業年金制度は、従来、適格退職年金と厚生年金基金があったが、90年代後半に運用環境の悪化等を背景に、企業年金の解散・廃止が相次いだ。こうした中で、2001年に確定給付企業年金法および確定拠出年金法が制定され、現在では企業年金の支払準備で多くの企業がDB、確定拠出年金制度(以下、「DC」という。)を導入している(図表2)。・企業年金のリスク負担としては、DCのリスクは加入者負担となっているが、DBのリスクは企業負担となっている。そのため、DBでは退職給付に関する積立状況をBSに反映する必要があり、退職給付債務と年金資産の差額を「退職給付に係る負債」として、BSに計上することが求められている(図表3)。図表1 退職給付(一時金・年金)制度の実施状況(2018年)100%80%60%40%20%0%30-99人100-299人300-999人1,000人以上企業規模計退職一時金のみ退職年金制度のみ両制度併用退職給付制度なし図表2 退職年金制度の支払準備形態(2018年)(%:複数回答)退職年金制度厚生年金基金確定給付企業年金確定拠出年金(企業型)自社年金調査計20.043.347.63.81,000人以上7.262.463.94.5300-999人9.759.750.63.3100-299人13.649.246.62.730-99人30.530.044.54.6図表3 退職給付制度の概念図年金資産退職給付債務割引率低下による債務増加運用悪化による資産の減少「退職給付債務」-「年金資産」の差額がオンバランスマイナス金利の影響・2016年1月にマイナス金利政策が実施されて以降、国債の金利は低下している(図表4)。・退職給付債務の算定において用いられる割引率は、安全性の高い債券の利回りを基礎として決定されるため、国内の債券市場全体の利回り低下によって、各社は割引率を引き下げており(図表5)、その結果、退職給付債務は増加している。・そうした中で、債務増加による影響の抑制や収益確保等のため、年金資産の中でリスク資産等の流動性の低い商品割合が増えている(図表6)。図表4 国債利回りの推移19181716151413122011(年)2.521.510.50▲0.5(%)10年国債利回り20年国債利回り図表5 割引率の水準別企業数割合の推移※2013年度から2018年度まで継続して割引率が取得できる金融を除く上場企業1696社を対象201314151617181.0%以下1.5%以下1.5%超マイナス0.0%0.5%以下100%80%60%40%20%0%(年度)図表6 年金資産の構成比の変化株式・投信対外証券投資その他現預金債券(国債等)保険等201112131415161718100%80%60%40%20%0%(年度)60 ファイナンス 2020 Mar.連載経済 トレンド

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