ファイナンス 2020年3月号 Vol.55 No.12
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高リスク国へ渡航するための研修IMFでは、南スーダンをはじめソマリアやイラクなどの高リスク国(High Risk Location)へ渡航するスタッフが受けなければならない研修(Safe and Secure Approaches to Field Environments)があります。この研修はIMFから外注を受けた民間警備会社が提供するもので、バージニア州郊外の施設で2泊3日の泊まり込みで行われます。研修では、高リスク国で起こりうるテロや銃撃、犯罪、人質事件などの緊急事態に巻き込まれた場合の対処方法について学びます。具体的には、最低限の護身術やケガをした場合の応急処置、空港やショッピングモールで銃撃戦に巻き込まれた場合にどのような行動をとるべきか、テロ組織に人質として捕まり尋問を受けた場合にどのような言動をとるべきか、運良くテロリストから銃を奪えた場合にどのように銃を操作し身を守るか、自分が乗っている車の運転手が狙撃された時はどのような対応をとるべきか・・・といったことを、広大な敷地内にある施設を使ってロールプレイング形式で学びます。自動小銃の銃声(空砲)が鳴り響く状況で行動したり、訓練とはいえリアルな心理的ストレスを与えられながらも受け答えを求められたりと、極めて実践的な内容で、非常に有意義な研修でした。Armored Vehicleでの移動現地では、IMFのセキュリティーオフィサー付き添いのもと、Armored Vehicleと呼ばれる装甲車両に乗って移動します。装甲車両といっても戦車のようなものではなく、一見すると普通のランドクルーザーのように見えますが、底部も含め車体全面に防弾・対地雷加工が施されており、ドアも一人では容易に開け閉めができないほどの重量・厚みをもっています。運転手も特殊な訓練を受けており、故障したり襲撃された場合に備え、基本的には2台一組で走行します。(Armored vehicle)滞在先のホテル過去3回のミッションでは、「Pyramid Continental Hotel」というホテルに滞在しました。武力紛争のさなか、2017年11月にオープンしたホテルで、非常に近代的で清潔感もあるホテルです。ジムやプールのほか、スパやサウナといった施設も備わっています。首都ジュバには他にライバルとなるような高級ホテルもまだ存在しないため、南スーダンを訪れるあらゆる要人が当ホテルに滞在します。2019年12月にミッションで訪れた際には、同じタイミングで反政府勢力のリーダーであるマシャール元副大統領も同ホテルに滞在していたり、さらにはホテル内の会議室では(南スーダンではなく)スーダンの暫定軍事政権と民主化勢力との間での交渉が行われていたりと、ホテル内は所属も様々な武装兵で溢れかえり、館内全体が非常に物々しい雰囲気に包まれていました。(Pyramid Continental Hotel外観)南スーダンへのミッションについて52 ファイナンス 2020 Mar.連載海外 ウォッチャー

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