ファイナンス 2020年3月号 Vol.55 No.12
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がテレビでも話題となりました。南スーダンには整備された競技場がないと知った群馬県前橋市が、全面的に南スーダン選手団を支援することに決めたそうです。練習以外でも、南スーダン選手団は学校訪問や地域の餅つきなどにも参加し、市民の有志も「南スーダン応援委員会」を立ち上げ選手をサポートするなど、南スーダン選手団と市民との絆が深まっています。7.最後に私はIMFに着任した2016年夏から現在まで約3年半にわたり、南スーダンを担当してきました。我が国とは全く状況が異なる脆弱国(Fragile States)であり、世界で最も新しい国である南スーダンに携わることで、これまで持ち得なかったような新たな視点や、多くの学びを得ることができました。南スーダンのような独立して間もない国は財政・金融制度もまだきちんと整備されておらず、政府がそれらを設計するにあたり、マクロ経済の専門家集団であるIMFの分析・コンサルテーションは非常に大きな影響力を持ちます。ミッション終了からほどなくして、大統領令が発出され、我々の提言に沿った政策が打ち出されるなど、新しい国ならではのスピード感とダイナミズムを感じることができます。一方、統計も未整備な部分が多く、データの入手も困難なため、分析の際には自ら推計モデルを構築し中長期的な見通しを立てる必要があるなど、担当エコノミストとしての苦労は尽きませんでした。そういった国の財政・金融政策の根本的な枠組みについて、当局の担当者と膝を突き合わせて議論し、分析・コンサルテーションという形で国づくりの一端を担うことができたのは、他ではできない貴重な経験であり、私にとって大きな財産となりました。このような機会を与えて下さった財務省・IMF、そして当局関係者すべての方々に感謝したいと思います。そして、南スーダン政府自身の努力と、ドナー国・国際機関・NGOにより絶え間なく続いてきた支援が実を結び、南スーダンに安定的な平和と繁栄がもたらされることを切に願います。※本稿の内容及び意見は筆者の個人的見解であり、筆者の所属する組織の見解を示すものではない。 ファイナンス 2020 Mar.51海外ウォッチャーFOREIGN WATCHER連載海外 ウォッチャー

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