ファイナンス 2020年3月号 Vol.55 No.12
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5.3 金融中央銀行としての信頼性を獲得することが喫緊の課題です。リザーブマネーなど明確な政策目標を設定することで、依然として高水準にあるインフレ率を抑制し、物価の安定を図る必要があります。また、外貨準備金の積み上げのためには、結果として外貨の流入を阻害してしまっている特別口座の廃止が慫慂されます。そして、為替市場の十分な自由化を図り、市場実勢に沿ったオフィシャルレートを実現することで、パラレルマーケットを消滅させることが求められます。民間銀行の自己資本不足については、自己資本比率規制を強化すると同時に、破綻処理制度を整備する必要があります。5.4 債務平和秩序を構築し、上記の財政・金融上の政策を実施することで、国際金融市場へのアクセスを取り戻し、より健全で持続的な借り入れ計画を作ることが望まれます。6.日本との関わり我が国は、世界で最も新しい国である南スーダンの国づくりを目的として、同国の平和の定着を支えるべく、独立当初から様々な支援を行ってきました。2012年1月から2017年5月までのあいだ南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に自衛隊が派遣されていた*6ことについてはご存じの方も多いかと思いますが、それ以外にも、二国間援助のほか、国際機関やNGO等市民社会を通じた支援等、オールジャパンでの積極的な平和構築支援が行われてきました。6.1 JICAによる支援我が国は国際機関経由の支援に加え、JICAを通じた二国間支援も積極的に実施しており、独立以降計4億ドル以上の無償資金協力や技術協力を行ってきました。JICAは独立当初から首都ジュバに事務所を開設し、橋梁や水供給などの社会インフラの整備、農業などの産業育成、教育・職業訓練などの基礎生活及び生*6) 部隊としての活動は2017年5月に終了したが、現在も司令部要員としての派遣は継続中。計向上支援、スポーツを通じた平和促進や警察・メディア・税関などのガバナンスや治安能力向上支援に重点的に取り組んできました。現在進行中のプロジェクトとしては、首都ジュバを流れるナイル川に唯一架かる老朽化した鉄橋に替わる、新たな橋を建設するナイル架橋(「フリーダム・ブリッジ」)建設計画などがあります。このプロジェクトは2016年7月の武力衝突以降、工事半ばで中断されていましたが、ようやく工事も再開され、2021年7月の完工に向け地元での期待が高まりつつあります。また、スポーツを通じた平和促進として、全国スポーツ大会「国民結束の日(National Unity Day)」の開催や、2016年の南スーダン選手団のリオ・オリンピック初参加も支援してきました。最近では、昨年12月、南スーダン政府との間で「税関コード導入による税関能力強化プロジェクト」に関する討議議事録に署名し、税関の近代化を支援することを発表しました。6.2 NGOによる支援我が国のNGOは南スーダンにおける人道支援で非常に大きな役割を担ってきました。独立以前の2006年より約15年間にわたり、紛争や災害時の緊急・人道支援を行うNGO組織「ジャパン・プラットフォーム」加盟の団体が広く活動を行っており、これまでに主に難民支援や食糧支援、水・衛生支援、子どもの保護といった事業を進めてきました。こうした我が国のNGOの支援活動には現地から多くの感謝の声が寄せられている一方、長引く武力紛争による治安の悪化や政府軍または反政府軍による援助活動妨害の横行もあり、現地での活動には大きな困難が伴っているのが現状です。6.3 文化活動・草の根交流現地では自衛隊が文化交流会を開催し、和太鼓演奏や演武、書道のパフォーマンスを行うなど文化交流を行っている一方、最近では日本国内においても南スーダンとの交流が話題になっています。昨年11月、東京五輪・パラリンピックに向け、南スーダン選手団が参加予定206か国・地域の中で一番早く日本入りをし、本番の8か月も前から事前キャンプを始めたこと50 ファイナンス 2020 Mar.連載海外 ウォッチャー

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