ファイナンス 2020年3月号 Vol.55 No.12
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1.はじめに私は2016年夏より、国際通貨基金(IMF)のアフリカ局のEastern I division(E 1)に所属し、エコノミストとして勤務しています。E1がカバーする東アフリカの5か国(エリトリア、エチオピア、ケニア、ルワンダ、南スーダン)のうち、私は 南スーダンとエチオピアを担当しています。同じ東アフリカの国々といっても、南スーダンとエチオピアでは歴史的背景やマクロ経済の状況も大きく違い、直面する課題も異なります。本稿では、南スーダンの概要に触れたのち、マクロ経済状況や今後の課題、日本との関わりや現地へのミッション(出張)の様子を紹介したいと思います。2.南スーダンの概要南スーダンは2011年7月に独立した世界で一番新しい国で、人口約1,200万人、国土面積64万平方キロメートル(日本の約1.7倍)の国です。公用語は英語であり、ディンカ族、ヌエル族をはじめ、40以上の部族から成る他民族国家です。2.1 武力紛争の歴史スーダンが1956年に英国とエジプトから独立して以降、主にイスラム教を信仰するアラブ系住民が多い北部(現:スーダン)に対し、主にキリスト教を信仰するアフリカ系住民が多い南部(現:南スーダン)は分離・独立を求めていました。数百万人が命を落とし、多くの人々が難民として国外に逃れた約半世紀にわたる南北間の内戦の末、2011年7月、南スーダンとして独立を果たしました。しかし、南スーダンは独立以降も主に部族間の対立や石油利権を巡る対立を背景とした度重なる武力紛争に苦しんできました。2013年12月、首都ジュバにおいてディンカ族出身のキール大統領を支持する政府軍とヌエル族出身のマシャール副大統領を支持する武装勢力による衝突が起こり、国内の治安は大きく悪化しました。2015年8月、IGAD(政府間開発機構:東アフリカの地域経済共同体)等の仲介により,衝突解決合意が締結され、翌2016年4月、国民統一暫定政府が設立されました。しかしながら、その3か月後の2016年7月、マシャール第一副大統領派によるクーデター未遂事件が発生し、南スーダンはまたしても内戦に突入していきました。2018年9月、IGAD等の仲介により衝突解決合意が再度締結され、改めて国民統一暫定政府の設立を目指すことになりました。その後の政府と反政府勢力間の交渉では、軍隊の駐屯・統一をはじめとする安全保障上の課題や州の数といった懸案事項が解決されず、国民統一暫定政府の発足は当初の2019年5月の期限から2度延長されました。山積する課題は交渉を続けることとし、国連や米国をはじめとする国際世論に促される形で、2020年2月、キール氏を大統領、マシャール氏を第一副大統領に据える国民統一暫定政府が設立され、国内情勢の正常化に向けた一歩を踏み出しました。FOREIGN WATCHER海外ウォッチャー「世界で一番新しい国」の 国づくりに携わる国際通貨基金(IMF) アフリカ局 エコノミスト 長谷川 実46 ファイナンス 2020 Mar.連載海外 ウォッチャー

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