ファイナンス 2020年3月号 Vol.55 No.12
21/84

額を見積もり、両者の間に乖離(歳出歳入ギャップ)が生じる場合、国と地方が折半し、地方交付税交付金の特例加算(国)と臨時財政対策債(地方)で負担する仕組みとなっている。(2)地方一般財源総額実質同水準ルール地方財政計画においては、平成23年度以降、地方の歳出水準について国の一般歳出の取組と基調を合わせつつ、交付団体をはじめ地方の安定的な財政運営に必要となる一般財源*3の総額について、前年度を下回らないよう実質的に同水準を確保することとされてきた(「地方一般財源総額実質同水準ルール」)。この「地方一般財源総額実質同水準ルール」の下、地方財政計画における一般財源総額は平成23年度以降、不交付団体の水準超経費*4や消費税率の引上げに伴う社会保障の充実に相当する分などを上乗せした水準で維持されてきている。このルールの下、歳出の伸びを抑制する中で、国や地方の税収の回復に伴い、地方財政計画における歳出歳入ギャップが縮小し、臨時財政対策債の発行も減少してきている。2. 令和2年度地方財政対策の概要について(1)「新経済・財政再生計画」等の方針政府は平成30年6月15日に「新経済・財政再生計画」を含む「経済財政運営と改革の基本方針2018」を閣議決定し、令和7年度(2025年度)の国・地方を合わせた基礎的財政収支の黒字化を目指す旨を掲げた。この財政健全化目標の実現に向けて、前述した「地方一般財源総額実質同水準ルール」を令和3年度(2021年度)まで維持することとしている。また、「令和2年度予算編成の基本方針」(令和元年12月5日閣議決定)においては、「新経済・財政再生計画」に沿った予算編成を行い、「地方においても、国の取組と基調を合わせ徹底した見直しを進める」とされた。これに先立って取りまとめられた財政制度等審議会の「令和2年度予算の編成等に関する建議」に*3) 地方税、地方譲与税、地方交付税交付金、地方特例交付金、臨時財政対策債の合計。*4) 不交付団体の基準財政収入が基準財政需要を超過する額の見込み。不交付団体の税収増に伴い、交付団体の財源(地方交付税交付金)が減少しないよう、地方財政計画の歳出に計上されている。おいては、「地方財政計画上の歳出・歳入の水準を適正なものとしていくことこそが、国・地方を通じた財政健全化のために必要である。」とされている。令和2年度の地方財政対策は、こうした方針・提言に沿って策定されたものである。(2)令和2年度地方財政対策のポイント令和2年度の地方財政対策においては、地方が人づくり革命の実現や地方創生の推進、地域社会の維持・再生、防災・減災対策等に取り組みつつ、交付団体をはじめ地方が安定的な財政運営を行うために必要となる一般財源総額について、前年度地方財政計画の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保することを基本として地方財政対策を講ずることとした。「地方一般財源総額実質同水準ルール」を堅持すべく、地方の歳出改革等を加速・拡大させつつ、人づくり革命の実現や地方創生の推進、地域社会の維持・再生、防災・減災対策等の取組に対応することが主な課題となった。その結果、・ 地方公共団体に交付される地方交付税交付金(出口ベース)は16.6兆円(対前年度+0.4兆円)、地方の一般財源総額を前年度と実質的に同水準の63.4兆円(対前年度+0.7兆円)としつつ、・ 前年度に引き続き、国と地方が折半で負担する財源不足をゼロにするとともに、臨時財政対策債の発行を縮減するなど、地方財政の健全化を推進する内容となった。あわせて、地方法人課税の偏在是正措置による財源を活用した「地域社会再生事業費」を新たに計上するとともに、防災・減災対策として、地方公共団体による河川等の浚渫を推進するための「緊急浚渫推進事業費」を創設するなど、現下の課題にも適切に対応するものとなった。 ファイナンス 2020 Mar.17令和2年度予算特集:2令和2年度地方財政対策について 特 集

元のページ  ../index.html#21

このブックを見る