ファイナンス 2020年2月号 Vol.55 No.11
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BOX 3 レポ取引:現担レポと現先日本のレポ市場を初めて触れた者が混乱する点は米国など海外でのレポ取引というとそもそもの名称である「買戻契約」に相当する「現先取引」が普及している一方、日本では長い間、現金を担保とした貸借取引である現金担保付債券貸借取引(現担レポ取引)が普及していた点です。前述のとおり、有価証券取引税の影響等から現先取引が普及しなかったことが背景にありますが、日本ではその特殊性から「日本版債券レポ市場」と呼ばれることもありました(このあたりの歴史的背景に関心がある方は東短リサーチ(2019)が参考になります)。その一方、グローバル・スタンダードに合わせるための努力が続き、2001年からリスク管理面等で改善された「新現先取引」が導入されました。金融機関のシステム対応等を背景に、新現先は普及しない期間がありましたが、2019年には新現先が取引の半分を超えるところまできています。その背景には、特に2019年の「T+1」決済導入以降、銀行等で新現先を使う慣行が普及したことなどが挙げられます*39。BOX 4 公開市場操作(オペレーション)とレポ取引量的・質的金融緩和以降の公開市場操作(オペレーション)では、日銀がオークションで国債を購入する国債買入オペ(いわゆる輪番オペ*40)が中心となっていますが、伝統的な金融政策が短期金利の操作であることを考えると、短期金融市場において重要な役割を果たすレポ市場とオペレーションは密接な関係にあります。白川(2008)によればオペレーションは「永続的オペ(長期)」と「一時的オペ(短期)」に分類できますが、国債買入オペは永続的オペと整理できる一方、共通担保オペが代表的な一時的オペとして挙げられます。共通担保オペは国債などを担保に金融機関に一定期間貸し付けを行うオペレーションですが、日銀が実施するGCレポと解釈することもできます。一時的オペには現先オペもありますが、これはその名の通り日銀によるレポ取引(現先取引)と解されます。近年重要性を高めている一時的オペは補完供給オペです。これは日銀が保有している銘柄を金融機関に貸し出すオペレーションです。こちらは日銀が実施するSCレポと解されますが、近年規模・内容共に改善傾向にあります。Hattori(2019b)や源間・稲村(2019)では補完供給オペが日本国債の流動性にプラスの影響を与えたと評価しています。なお、海外の中央銀行でも一時的オペとしてレポが用いられています。例えば米連邦準備理事会(Federal Reserve Board, FRB)によるレポ・オペがその代表例として挙げられます。FRBのレポ・オペについては2019年後半、米国レポ市場における混乱をうけ、FRBが実施したオペレーションとして注目を受けました。*39) 「T+1」決済に伴い、銘柄後決めGCレポ取引の残高も増加しています。決済の短期化によるレポ市場への影響については日銀による「わが国短期金融市場の動向-東京短期金融市場サーベイ(19/8月)の結果-」や藤本等(2019)などを参照してください。*40) かつて日銀が輪番方式で国債の買い入れを実施していたことが語源といわれています。 ファイナンス 2020 Feb.79シリーズ 日本経済を考える 97連載日本経済を 考える

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