ファイナンス 2020年2月号 Vol.55 No.11
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現在、Jリーグの課題は、ファンの高齢化です。Jリーグのファンの平均年齢は現在42歳です。Jリーグ創設時からきれいに上がっています。一方、メルカリのユーザー層は若い女性が中心です。相互に得意とする対象が異なっているので、それぞれのユーザーやサポーターが行き来するような形になれば大きなメリットがあるのではないかと思います。イ. ブランド力向上2つ目は、ブランド力向上です。私たちはまだ創業から6年半の若い会社ですので、日本を代表するアントラーズのブランドを活かし、メルカリのブランドも固めていきたいのです。ウ. ビジネス機会の創出3つ目は、ビジネス機会の創出です。私たちは、アントラーズを通じて、スポーツビジネスだけではないことをやっていきたいと考えています。これは大きく分けて2つあります。●エンターテインメントまずは、エンターテインメントです。エンターテインメントビジネスであるスポーツとテクノロジーとの掛け算は、とても相性が良いのです。今後、テクノロジーが進化すると、週休3日など、働かなくなる社会になったときに、スポーツや音楽といったエンターテインメントが、人々に潤いや豊かさを与えるのに欠かせなくなってくるでしょう。そういう状況において、5G(第五世代移動通信システム)、もしくはVR(仮想現実)、AR(拡張現実)をはじめとしたテクノロジーは確実に伸びると思っています。●地域次に、地域です。地域とテクノロジーの掛け算も絶対伸びます。これから5Gが入ってきます。そして、これからの社会は「アンビエント社会」になっていきます。つまり、私たちはこれから常時接続のネットワークの中で生活していくようになる。そうなると、良くも悪くも、私たちの行動が全部データ化される、もしくは「見える化」されていくわけです。今後、テクノロジーがリアルな社会への変化に対して寄り添いやすくなっていきます。リアルな生活が、全部テクノロジーでネットワークの中につながったときに、すごく生活は変わります。私は、鹿島を中心としたホームグラウンドをテクノロジーで地域課題を解決する一つの実証実験の場にしたいと思っています。地域にアイコンとしてのサッカーチームがあるので、住んでいる人からも「アントラーズがやるのなら応援しよう。」と理解をいただける、また、私たちとしても地域にスムーズに入っていくことができるのではないかなと思っています。6.メルカリのESGメルカリのESGについてお話しします。ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)のことです。企業が長期的に成長していくために必要な3つの視点です。最近、私たちは、ESGのレポートを初めて出しました。そのレポートでは、循環型社会の実現や循環型社会の実現に向けた文化醸成・教育など、5つの重要な課題を設定して投資家に説明しています。循環型社会の実現をビジネスの形で行い利益を上げている会社というのは、世界的にも少ないので、この点は評価いただいているところかなと思っています。7. 個人がエンパワーメントされる 社会へ「今後、どういう社会になるのか?」と、よく聞かれます。これに対し、私は「テクノロジーで個人がエンパワーメントされる社会になる」と説明しています。今までの資本主義社会では、個人が社会に合わせていた方が、効率的に皆が豊かになれました。しかし、今後は、テクノロジーの発展により、例えば、SNSでの情報発信など、どんどん個人がエンパワーメントされてイニシアティブを持つようになります。そして、その人がその人らしく、人生を送ることができる社会になっていくと思うのです。おそらく、これからの社会というのは、この切り口で多くの課題が解決できるような形に変わっていくのではないかと思っています。また、そういう社会になっていってほしいなと思っています。68 ファイナンス 2020 Feb.連載セミナー

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