ファイナンス 2020年2月号 Vol.55 No.11
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というと、メルカリの売上や獲得ポイントを活用したキャッシュインです。これは私たちにしかない機能です。そのキャッシュインしたお金で、利用者にモバイルペイメントを体験してもらうのです。5回、10回やっていく過程で、モバイルペイメントは便利だから、給料の一部はメルペイに入れようかなというように、これまでの習慣は変わっていくことを期待しています。メルペイの支払いには、QRコード又はバーコードによるコード払いと非接触型決済「iD」による支払いの2つがあるので、多くの店で使えるというのが特徴的です。PayPayなどは、加盟店開拓に力を入れていますが、私たちは、そこでの勝負はあまりしなくていいかなと思っています。私たちは、どちらかと言うと、ユーザーサイド、消費者サイドの行動を変えるほうを差別化のポイントに置いています。メルペイは、2019年2月にサービスを開始して、125日間で登録者数200万人を突破しました。今も順調に伸びてきています。(2)メルカリとメルペイのシナジー効果次に、メルカリとメルペイのシナジー効果についてお話しします。メルペイの決済手数料のみで稼ぐのは、なかなか難しいことです。他方、メルペイを使えば使うほど、メルカリでモノを売ろうという方も増えるはずです。メルカリはちゃんと手数料10%をいただくので、メルカリでモノの売買が増えていけば、グループ連結としてはちゃんと収支が合います。こういう説明をしながら、メルペイへの投資をある程度、合理的に説明できるようにしています。あとは、メルカリでは、出品者と購入者がそれぞれを評価していますので、そういうレーティングの情報で信用が「見える化」すると、新しいクレジット・スコアリングの形ができるのではないかと思っています。メルカリでのレーティングを通じて、例えば、主婦や学生など、今までお金が向かわなかった人に対して、ちゃんとスコアリングができてお金が向かう仕組みや社会を作っていきたいと思っています。4.米国での事業展開現在、米国での事業は、年率70%くらい伸びてきている状況です。イメージとしては、日本での事業規模に比べてゼロが一つ少ないといったところです。ぐぐっと伸びて、落ちて、今はまたぐっと伸びています。最初にぐぐっと伸びた時には、App Storeのアプリダウンロードランキングで全米3位までいきました。キャンペーンが大いにヒットし、とてつもなく伸びたのです。しかし、フィリピンにあるカスタマーサポート拠点のオペレーションがパンクするという大失敗があり、落ち込んでしまいました。その後、オペレーションを作り直して、今は年率70%で伸びてきています。App Storeのレーティングでもほとんどのユーザーから5つ星をいただき、競合アプリと比べても一番良い評価を得ています。私たちとしても、ようやくプロダクトの満足度が上がってきたところかなと思っています。ここからPRマーケティングを徐々に踏み込んでいき、今の70%成長というのを更に加速していく流れにもっていきたいというのが、現在の米国事業のフェーズです。5.鹿島アントラーズへの経営参画(1)約62%の株式取得メルカリ、メルペイ、米国での事業に次ぐ4本目の柱として、鹿島アントラーズへの経営参画についてお話しします。鹿島市自体は6万7,000人ぐらい、ホームタウンを全て足しても20万人ぐらいの小さいエリアです。そこにJリーグで圧倒的な実績を残す鹿島アントラーズがあるのです。2019年7月、私たちはアントラーズの約62%の株式を取得し、経営に参画しています。(2)経営参画の狙い私たちは、アントラーズの経営参画で何をやりたいのでしょうか。ア. 顧客層の拡大1つ目は、アントラーズと相互に顧客層を拡大することです。 ファイナンス 2020 Feb.67職員トップセミナー 連載セミナー

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