ファイナンス 2020年2月号 Vol.55 No.11
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で、自動車の出品が簡単に行えるようにしています。書籍の場合にも、裏側のバーコードを読み込むことで、情報が全部出てきますので、10秒で出品できます。このように、テクノロジーを使ってどんどん出品しやすくしていくことに取り組んでいます。テクノロジーで他との差別化を図っていかないと事業は伸びません。ウ. 幅広い層へのマーケティング3つ目の取り組みは、幅広い層へのマーケティングです。私たちはネット企業ですが、オフラインのマーケティングにも注力しています。例えば、私たちは現在、コインランドリーと提携しています。コインランドリーで洗いたての洋服をそのまま撮影できる撮影ブースと、その場で梱包もできる資材が用意されているブースを設置することで、その場で撮影、出品ができるようにしています。ほかにも、MISTER MINITのような靴やバッグを修理する専門店やハンドメイドやリメイク、包装といった私たちの周辺産業とコラボすることで、出品強化を図っています。また、NTTドコモなど携帯キャリア各社とともに「メルカリサロン」というものを実施しています。キャリアとしては、従来型の携帯電話、ガラケーの利用者をスマートフォンにシフトさせたいのです。そこで、買い替え促進とメルカリの顧客開拓をセットにした教室を60歳代以上の方を対象に実施しています。こちらは非常に好評で毎回満席となっています。モバイルペイメントに取り組んでいると感じるのですが、いくらキャッシュレス化が進んでいるといってもデジタル機器に慣れていない60歳代以上の人たちはその恩恵を受けられないのです。これは北欧などで大きな問題になっています。デジタル機器に慣れていない人々をケアしないといけない、情報弱者を出してはいけないということで、私たちとしても様々なオフラインの施策を実施しています。(10)メルカリの成長の理由では、なぜメルカリが成長したのか、ということについてお話しします。ア. 所有から利用へ1点目に「所有から利用へ」という流れがあるのではないかと思っています。かつて、大量生産・大量消費で効率的に皆が豊かになった時代においては「所有」に価値がありました。しかし、この2、3年のデータを見ると、中古品を購入する機会が多くなったという人が増加していることが分かります。つまり、今では社会全体が「何でも新品を買う時代」から「循環型」にマインドが変わってきているのではないかと思います。また、フリマアプリを利用している人にアンケートを実施すると、半分以上の人が「売ることを前提に」新品を買っています。若い人たちは新品を買う前にメルカリの画面を閲覧して、この商品がいくらで売れるかを事前に確認した上で買うのです。そのため、今では、二次流通を意識した上での、モノの売り方、作り方をしなければいけないと思っています。イ. 承認欲求2点目は、先ほど述べた承認欲求です。これは、利用の目的がお金目的より、もったいない精神であることです。ウ. ゲーム要素そして、3点目は、ゲーム要素です。コミュニケーションや交渉にゲーム要素、中毒性があるのだと考えています。それは先ほども触れたとおり、私たちがコマースとメディアの中間のような存在であることによるものです。3.メルペイ事業(1)メルペイの特徴次に、私たちが準備しているのは、ペイメントです。ペイメントは、Winner-take-allのような1社だけが圧倒的に勝つ状態になることはおそらくないと思っています。私たちのペイメントもあれば、楽天やヤフー、銀行系もあるということです。つまり、併存型のビジネスになっていくのではないかなと予想しています。メルカリのペイメント、メルペイは何が特徴なのか66 ファイナンス 2020 Feb.連載セミナー

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