ファイナンス 2020年2月号 Vol.55 No.11
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メルカリでの滞在時間の長さや評価の高さにつながっていると思うのです。これからの消費は承認欲求をどのように刺激するかが一つのキーポイントになってくるのです。(7)安心・安全な取引を実現するシステム出品者が一番おそれていることは「代金が振り込まれないのではないか」ということです。私たちは購入代金が口座に入金されたことを確認して初めて、「支払いがあったので発送してください」という通知を出品者に送ります。つまり、必ず一度メルカリが代金をホールドします。出品者からすると、そこでお金がホールドされるので、代金の取り損ないは起こりません。商品が発送され購入者に商品が届きますが、違う商品が届くなど、何か問題がある場合には購入者がキャンセルすることによってメルカリがホールドした代金が購入者に戻り、商品も出品者に戻ります。購入者が商品を受け取ると、購入者が出品者を三段階で評価します。この評価をもって初めて、私たちは販売手数料10%と配送料を引いた残額を出品者にお渡しします。私たちが間に入ることで、出品者、購入者双方が不安を解消して安全な取引ができるのです。また、出品者も購入者を評価します。双方の評価が累積していくことが、シェアリングサービスを行う我々にとってはとても重要なのです。相互に評価し合うことで秩序が保たれるマーケットプレイスとしてのガバナンスが効いてきます。これは、AirbnbもUberも同じです。(8)簡単で安価な配送メルカリには、ラストワンマイル(最終拠点からエンドユーザーへの物流サービス)に「配送」というリアルなサービスが入ります。今では、コンビニやPUDOステーション(オープン型宅配ボックス)のロッカーも対応できるようになっています。QRコードをコンビニ端末にかざすと、自動的にシッピングラベルが印刷され、このラベルを貼るだけで配送されます。このシッピングラベルは、双方の名前と住所が出ない匿名での売買となります。安価な配送という点に関しては、ヤマト運輸及び日本郵政と法人の契約をしています。「日本全国どこに送っても定額」というサービスです。地域によって配送料に違いが出ると、自分の取り分が変動するので、日本全国どこに送っても通常の配送料より安く、また、定額で送ることができる分かりやすいサービスを提供しています。(9)ユーザー拡大のポテンシャル日本において、いわゆる不用品と呼ばれているモノの推定価値は年間7.6兆円あります。私たちの売上は、まだ年間4,000億円や5,000億円程度ですので、まだまだ捨てられているモノがあるのが現実です。そして40歳代、50歳代の方々には、まだメルカリを利用していないポテンシャルユーザーも多いのです。いろいろとアンケートを実施してみると、今よりも3倍程度の3,600万人まで顧客を増やすことができると考えています。そのためには、次のような取組みを行いたいと考えています。ア. AIを利用したプロダクト施策ポテンシャルユーザー掘り起こしのための1つ目の取組みは、AIを利用したプロダクト施策です。AIを使って出品を簡単にするのです。出品予定のスニーカーの写真を撮ると、自動的に「この商品はスニーカーで、メーカーは○○、売れ筋の価格帯は○○円」という情報が簡単に分かるのです。特に、値段の目安が分かることは重要です。多くの方は値付けの経験がないので、こうしたデータを提供することで、あまり悩まずに出品していただけるようにしていきたいと考えています。買う側に関しても、AIによってホーム画面のパーソナライズができます。私はスニーカーが好きなので、私のホーム画面には靴が多く表示されます。このように、見る人に応じて商品がパーソナライズされるのです。また、違反出品の検知にもAIが使われるようになっています。イ. カテゴリー別施策2つ目の取組みはカテゴリー別施策です。例えば、私たちは、車検証のQRコードを読み込ん ファイナンス 2020 Feb.65職員トップセミナー 連載セミナー

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