ファイナンス 2020年2月号 Vol.55 No.11
67/96

に楽天が買収して、いまはラクマというサービスになっています。私たちは最初から、私たちが戦っている土俵はWinner-take-allの構造だと意識し、最初は良いプロダクトを必死に磨く、そしてどこかのタイミングで大規模なプロモーションを仕掛けていき、Winner-take-allのWinnerになるという戦略をとりました。イ. サービス作りへの注力私は、経営というのは車の運転と同じだと考えています。左の車輪がプロダクト、右の車輪がPRマーケティング、そしてガソリンとしてのファイナンスがあり、最後にハンドルを握る経営陣がいる。このバランスで車が進む、経営も前に進んでいく、というものです。そこで、まずは左の車輪であるプロダクトをしっかり作り上げて、徐々に右に車輪であるPRマーケティングに移っていくという形で進んでいこうと考えました。最初の1年のうち、半年間はサービスを作ることに集中しました。中途半端なサービスを出してしまうと、おそらく、その後のスケールに耐えられないだろうということを見越して半年間じっくりとモノづくりを行いました。半年かけてモノづくりをした上で、2013年7月、サービスのローンチと3億円程度の資金調達を実施しました。また、最初の1年間はオンラインのマーケティングもやって“PDSA”(plan-do-study-act)を回していくということをやりました。2013年12月には、アプリのダウンロードが100万ぐらいになりましたが、このタイミングでは社員数はまだ10名ぐらいです。ウ. テレビCM・カスタマーサポート拠点整備100万ダウンロードを達成したので、翌年に向けた準備として、資金調達を行おうと考えました。そして、3か月奔走して、ようやく2014年3月に15億円を調達しました。当時は、商品の売買時に販売手数料を取っていなかったため、売上ゼロです。売上ゼロの社員数10名ぐらいの会社で、さらに他社で先行するサービスがあったという状況だったこともあり、多くの先から資金調達を断られました。しかし、最終的には、私たちのことを信じていただいた先から15億円を調達することができました。調達後、すぐに2つのアクションを起こしました。1つ目はテレビCMです。このタイミングはまさにマーケティングの勝負時だと信じて、5億円規模のCMとオンラインマーケティングの発注をしました。2つ目には、仙台にカスタマーサポートの拠点を設けました。CMのヒットを見越して80名規模のカスタマーサポートの拠点を借りました。2014年5月の連休明けにテレビCMを開始したところ、同月中に100万ダウンロード積み上がり、その後、200万から300万へと伸びました。このタイミングで一気にマーケットの中では「フリマアプリと言えばメルカリだよね。」という評判になりました。2014年5月から6月ぐらいでトップの会社を抜き去り、8月にかけて差が開いていきました。このタイミングではかなりの手応えを感じていました。エ. 米国進出このあと米国に進出していきます。スマートフォンのアプリとなると、いやでもグローバルで戦わないと生き残ることができません。そうであれば、早い段階で勝負しようということで、2014年9月には米国でのサービスを開始しました。オ. 販売手数料の有料化米国で成功するためには資金が必要になると考え、2014年10月、日本事業で初めて10%の販売手数料をいただくようになりました。同じタイミングで23億円の資金調達を行い、手数料有料化による顧客離れを抑制するために5億円のテレビCMとオンラインマーケティングを新たに投入しました。日本を盤石にしてグローバルで戦う上での資金を稼いでいくため、この10月に一気に仕掛けていきました。日本での事業は、手数料有料化後もほぼ無風の状況で伸びていきました。ユーザーは、手数料有料化以上に、一番売れるタイミングで売りたいという思いがあったのではないでしょうか。この後、2015年2月にはアプリのダウンロードが1,000万を突破し、1年間で10倍伸びました。 ファイナンス 2020 Feb.63職員トップセミナー 連載セミナー

元のページ  ../index.html#67

このブックを見る