ファイナンス 2020年2月号 Vol.55 No.11
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コラム 経済トレンド68大臣官房総合政策課 調査員 石神 哲人/葭中 孝近年の雇用環境と人手不足について本稿では、近年の雇用動向を踏まえて、人手不足の背景と今後必要とされる方向性について考察した。近年の雇用環境・足元の雇用環境をみると、雇用者の増加基調が継続している。背景には、女性の社会進出やシニア再雇用の拡大がみられる。また、失業率もバブル期に匹敵する低い水準となっており、総務省が「完全雇用に近い状況にある」との見方を示すなど、雇用環境は着実に改善している(図表1、2)。・他方で、15歳~64歳以上人口が減少傾向にある中で、潜在的な雇用者数の増加には限界があり、長期的に雇用者数が増加し続けることを期待できるわけではない(図表3)。(図表1)雇用者数・完全失業率(万人)(%)3,0007,0008.06.04.02.00.06,0005,0004,00019859095200005101518(年)雇用者完全失業率(右軸)(図表2)雇用者数の増加内訳(前年差、万人)※年平均。2019年は1‒11月の平均。▲5020015010050020141516171819(年)男性(15~64歳)男性(65歳~)女性(15~64歳)女性(65歳~)(図表3)15歳以上人口の推移(万人)015,00010,0005,00020101519(年)15~64歳65歳~人手不足といわれる状況・雇用環境の改善の背景には労働需要の高まりがあり、新規求人数は2010年頃より増加傾向にある。同時に有効求人数も増加傾向にあり、求職者数の伸びを上回る求人の伸びが見られる(図表4)。・企業のマインドを反映する雇用人員判断DI(全規模全産業)は、バブル期以来の水準に迫っており、特に中堅企業や中小企業において、人手不足感がより顕在化している(図表5)。・近年の倒産の中には、求人難や従業員の退職を理由とするものが、件数は少ないものの徐々に増加している。企業側にとっては、人手不足が経営に大きな影響を与えるようになっている(図表6)。(図表4)新規求人数と有効求人数※季節調整値。四半期ごとの推移。有効求人数新規求人数30025020015010050(万人)02005101519(年)(図表5)雇用人員判断DI中堅企業中小企業大企業403020100▲10▲20▲30▲40(「過剰」-「不足」、%ポイント)▲5090001019(年)(図表6)人手不足関連倒産件数※東京商工リサーチが定義する人手不足型倒産の要因のうち、雇用に関する「求人難型」と「従業員退職型」の合計。(件)0140120100806040202013201420152016201720182019(年)58 ファイナンス 2020 Feb.連載経済 トレンド

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