ファイナンス 2020年2月号 Vol.55 No.11
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第二十六回 #新潟のコメジルシ※ニイ「ガタ」、「トキ」、書いてみませんか?「運転手さん、おすすめの観光スポットどこですか?」「いや~お客さん、何もねえて(ないよ)。」新潟でタクシーに乗ったときの典型的な会話の一コマです。日本は謙遜を旨とする国民性と思いますが、特に日本海側や北日本にこうした反応の割合が多いのではないでしょうか。「純白のたんぼに降り立つ白鳥の群れとか、どの食堂にふらっと入っても外れがないとか、すごくないですか?」と話を振っても、「そんなの昔からそうらっけねー(そうだからね)。」と盛り上がらないこともしばしば。でも、具体的に指定して人気のお店や運転手さんの好きなお店を聞くと誠実に返してくれます。少し脱線しますが、新潟のタクシーは、会社を問わず、車が走り出してからメーターを動かし、車が止まる前にメーターを止めるんです。この遠慮深い慣習、西日本の方々を乗せるといつもびっくりされます。中身を超えてプレゼンを盛る行動に走るのは褒められることではないものの、さりとて発信しないと十分伝わらないのも事実。多種多様な枝豆や茄子(ファイナンス2018年11月号参照)など、大胆に言えば「自分達も意識していない魅力を自分達で囲っている」新潟県民。今月はそんな不思議な地域の魅力の発信の動きについて取り上げます。県民の8割が愛着。でも積極発信は 1割未満そんななか、花角知事の肝いりで、新潟の魅力を考える一環として懇談会を開催。「銀座のフレンチレストランで「実はこれは新潟産です」という話もよく聞く。実は、隠れた名品がたくさんある。」「移住してみると新潟は意外と都会で、しかも東京から新幹線ですぐ行き来できる。海も山もあって、スノボも温泉も楽しめる。家賃も東京の半額くらいで、最高だなという印象がある。」といった声が上がりました。一方で、あわせて行ったアンケート調査では、新潟県民の8割が新潟県に愛着を持ち、6割が魅力的な場だと感じ、5割は発信したいと思いつつも、県外の人に積極的に発信されている方は1割にも達していないことがわかりました。地域毎にみると、「佐渡」、「湯沢・魚沼」で高く、「妙高・上越」で低い傾向です。総じて奥ゆかしくて引っ込み思案な気質なので当然といえば当然ですが、一方で、機運ができればみんなでやっていく特徴もあると思います。そこで、「新潟※(コメジルシ)プロジェクト」がスタートしました。最初の取組は、県民を中心として新潟の魅力をインスタグラムに投稿してもらうフォトコンテスト。インスタの活用を業務で行う場合、海外の旅行者等ターゲット層へのアピールを狙うことが多いと思いますが、まず自分たちで何かを魅力的と認識すること、それをアップするちょっとしたアクションが目的。私はこの企画に直接関わってはいませんが、端からみるとこのミッションの小ささ!が、冒頭に書いたような県民気質に照らして、地に足がついていて結構好きです。ぜひ皆様もこの投稿、2月29日(土)までやっていますので、新潟コメプロから検索してご参加下さい。新潟ってコメだけでしょ、と言われると実は少し凹む新潟県人が、※(コメジルシ)を使っているのも自虐的でいいです。脱線ついでに、※は日本独自の記号で、注釈の意味新潟県総務管理部長(元財務省広報室長)佐久間 寛道56 ファイナンス 2020 Feb.連載ニイ「ガタ」、「トキ」、書いてみませんか?

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