ファイナンス 2020年2月号 Vol.55 No.11
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1. 令和元年度補正予算及び令和2年度予算編成の背景と考え方日本経済については、海外経済の減速等を背景に外需が弱いものの、雇用・所得環境の改善、高水準の企業収益等により、内需を中心に緩やかな回復を続けている。一方で、昨年は、自然災害が相次ぎ、広範囲にわたり甚大な被害が発生した。また、通商問題を巡る動向をはじめ、様々な不確実性が存在しており、海外発のリスクには留意していく必要がある。(参考)令和元年度の実質GDP成長率は0.9%程度、名目GDP成長率は1.8%程度と見込まれており、令和2年度はそれぞれ1.4%程度、2.1%程度と見込まれている。こうした経済認識の下、昨年12月5日に(1)災害からの復旧・復興と安全・安心の確保、(2)経済の下振れリスクを乗り越えようとする者への重点支援、(3)未来への投資と東京オリンピック・パラリンピック後も見据えた経済活力の維持・向上を柱とする「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」が閣議決定され、13兆円規模の財政支出を講じることとなった。経済対策に基づき、15ヵ月予算の考え方の下、令和元年度補正予算を新たに編成するとともに、予備費を含めた令和元年度予算、令和2年度の臨時・特別の措置を適切に組み合わせることで、リスクに対して強靱な経済構造を構築し、民需主導の持続的な経済成長の実現につなげていくこととしている。一方、財政状況に目を転じれば、国と地方の債務残高がGDPの2倍程度に膨らみ、なおも累増が見込まれ、また、国債費が毎年度の一般会計歳出総額の2割以上を占めるなど、引き続き、厳しい状況にある。このような状況において、引き続き、経済再生と財政健全化に着実に取り組んでいく必要があり、そうした中で、我が国としては、人口減少・少子高齢化という大きな課題を克服するため、全世代型社会保障制度の構築とその持続的運用をはじめとした、経済社会の構造改革を加速していくことが極めて重要である。2.令和元年度補正予算の概要令和元年度補正予算は、前述の「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」の実行等のためのものであり、予算フレームは以下の通りである。歳出については、経済対策の実行及び国際分担金等の追加財政需要について、4兆4,722億円の歳出の追加を行うこととしている。これらの財源面については、歳出において、既定経費を1兆2,908億円減額するとともに、歳入においては、建設公債2兆1,917億円、税外収入1,881億円及び前年度剰余金8,016億円を計上することとしている。他方、税収は▲2兆3,150億円の減額を見込んでおり、また、国税の減収に伴う地方交付税交付金原資の減額の補塡のため、所要額を計上している。これらについて、特例公債金2兆2,297億円を発行することで対応することとしている。この結果、令和元年度補正後予算の総額は、当初予算に対し歳入歳出ともに3兆1,946億円増加し、104兆6,517億円となる。また、特別会計予算等についても所要の補正を行っている。令和元年度補正予算及び 令和2年度予算について主計局総務課主計官 寺岡 光博2 ファイナンス 2020 Feb.特 集

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