ファイナンス 2020年2月号 Vol.55 No.11
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~同+3.4%、発展途上国全体の成長率が同+3.9%~同+4.6%、中東及び中央アジア・コーカサス諸国の成長率が同+0.9%~同+2.9%であることを考慮すれば、同国経済のポテンシャルの高さが伺えよう。(3)物価の動向消費者物価指数上昇率(年平均、前年比)をみると、2017年9月に実施された通貨スムの大幅切り下げ【図表4】による輸入商品価格の上昇等を背景に、2016年の前年比+8.8%から、2017年の同+13.9%、2018年の同+17.5%(IMFの暫定値)へ、伸びが加速した【図表5】。なお、ウズベキスタン中央銀行は、物価の大幅な上昇を予防するため、通貨スムの切り下げを実行する約3ヶ月前(2017年6月)に、政策金利(リファイナンスレート)を9%から14%に引き上げたが、インフレ圧力が収まらなかったため、2018年9月に16%まで引き上げた【図表6】。しかし、IMF予測による今後の消費者物価指数上昇率は、2019年が+14.7%、2020年が+14.1%と、引き続き2桁代で高止まりすると見込まれている*9。*9) 2017年9月に実施された通貨の大幅切り下げの影響は、1年後の2018年9月に剥落しているので、インフレ率が引き続き高いのは、2019年1月のVAT改正(賦課対象品の拡大)、為替自由化の進展(スム安による輸入物価の上昇)、エネルギー企業の民営化による公共料金の値上げ、小麦価格等物価の自由化の進展等の要因が考えられる。(4)海外からの直接投資額海外からの直接投資額についてみると、前述したとおり、様々な改革を受け投資環境が改善されたこと等から、2018年の対内直接投資額(フロー)は4億1,200万ドル(名目GDP比0.82%)となり、前年の9,800万ドル(名目GDP比0.16%)から、約4倍に増加した【図表7】。(5)国際機関の評価、首脳会談等物価上昇率は当面のあいだ高止まりするものの、海外からの直接投資額が大きく増えていること等ポジティブな側面も多く、実質GDPも今後堅調に成長する見込みである。また、大統領の改革については、IMFの4条協議レポートにおいて歓迎すべき内容との記載があるほか、世界銀行のDoing Business 2020において改善国トップ20に選ばれるなど、国際機関からも高く評価されている。今後の改革を含めた政治・経済動向について、引き続き注視してまいりたい。なお、前述のとおり、昨年12月にミルジョーエフ大統領は就任後初めて日本を訪問し、同月19日には安倍総理大臣との首脳会談が行われた。この会談において署名された「日本国とウズベキスタン共和国との【図表4】ウズベキスタンスムの推移(スム/USD)1,0002,0003,0004,0005,0006,0007,0008,0009,00010,0002015/012015/072016/012016/072017/012017/072018/012018/072019/012020/012019/07(年/月)(スム/USD)(出所)Bloomberg↑スム高↓スム安足もとは緩やかなスム安傾向。2017年9月、為替レートの一元化を実施し、4,210スム/USDから8,100スム/USDに下落。【図表5】消費者物価指数(年平均、前年比)予測17.5%(暫定値)(注)2018年はIMF推計、2019年以降は同見込み。(出所)IMF(2019a)8.8%13.9%14.1%14.7%(年)(%)20202019201820172016201520142013201220112010200920082007201816141210864【図表6】政策金利の推移2018年9月25日:14%⇒16%2017年6月28日:9%⇒14%(出所)CBU(2019)(年/月)2019/12018/12017/12016/12015/12014/12013/1181614121086(%)【図表7】対内直接投資額(フロー)の推移1(出所)UNCTAD(2019)、IMF(2019a)2018(年)2017201620150.01.02.03.04.05.000.20.40.60.8(%)(億ドル)対内直接投資額(フロー)名目GDP比(右軸)48 ファイナンス 2020 Feb.SPOT

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