ファイナンス 2020年2月号 Vol.55 No.11
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鉄道に限られてしまうため、輸送量・コスト面での制約がある。一方で、天然資源(ウラン、金、原油、天然ガス等)に恵まれていることに加え、中央アジア諸国で最も多い約3,300万人の人口を有していること等から、同国経済のポテンシャルは高いとの見方が多い。2018年の産業別GVA(Gross Value Added)シェアをみると、綿花をはじめ野菜や果物の生産が盛んであることから、農林水産業が32.4%と一番大きなウェイトを占めている。また、同国は繊維業が盛んであることに加え、自動車を製造していることもあり*7、製造業は18.4%と相当程度のウェイトを占めている。なお、同国は前述のとおり天然資源が豊かであるものの、鉱業・採掘業が占める割合は6.0%程度であり、隣国のカザフスタンの同割合が16.3%*8であることを鑑みると、天然資源のみに大きく依存する経済構造ではないといえよう。【図表1】(2)実質GDP成長率2018年の実質GDP成長率をみてみると、前年比+5.1%と、前年の同+4.5%から成長の速度は加速した。これを産業別にみると、悪天候の影響もあり、農林水産業の伸び率は同+0.3%と前年(同+1.2%)から鈍化したが、製造業の伸び率は同+6.3%(前年:同+4.2%)、鉱業・採掘業の伸び率は同+31.8%(前年:同+17.6%)、建設の伸び率は同+9.9%(前年:同+6.0%)と前年から加速し、同国の成長をけん引した。需要項目別にみると、2018年の個人消費は同+4.3%*7) 乗用車はウズオート・モータース(2019年7月にGMウズベキスタンから社名変更。)、小型・中型のバス・トラックはサムオート(いすゞ、伊藤忠が出資)、大型トラックはドイツのMANが製造。*8) 出所:ADB(2019)と、前年の同+3.9%から成長の速度は若干加速したほか、2018年の総固定資本形成は同+18.1%と、前年(同+19.4%)に引き続き力強く成長した。過去数年遡り、大統領就任前後の年を確認すると、個人消費について、2016年以前は同+9.0%~同+12.0の伸びを続けていたものの、2017年以降は同+4%前後の伸びとなったのは、2017年の通貨切り下げによる物価上昇(後述)が個人消費の伸びを鈍化させたと考えられる。また、総固定資本形成については、2016年以前は同+4.1%~同+9.8%の伸びであったが、2017年以降は政府による積極的なインフラ投資、外国企業等による投資の増加等の影響を受け、同+20%弱まで伸びが加速したと考えられる。輸出・輸入については、為替改革(為替の一元化・外貨兌換の自由化)や近隣諸国との関係改善等の影響等により、2018年に大きく増加したとの見方である。【図表2】今後の見通しについて、IMFの推計に基づく同国の実質GDP成長率をみると、2019年は同+5.5%、2020年は同+6.0%となっており、成長の速度は今後緩やかに加速すると見込まれている【図表3】。なお、同推計に基づく同期間の世界全体の成長率が同+3.0%【図表2】実質GDP成長率(主要項目のみ、前年比)(単位:%)20142015201620172018GDP7.27.46.14.55.1GVA7.37.66.14.35.1産業別農林水産業6.06.16.21.20.3製造業8.05.96.74.26.3鉱業・採掘業▲6.82.90.817.631.8建設業17.618.87.26.09.9需要項目別個人消費10.712.09.43.94.3総固定資本形成9.89.44.119.418.1輸出▲7.52.311.11.310.7輸入0.3▲11.2▲2.215.539.4(出所) State Committee of the Republic of Uzbekistan on Statistics(2019)【図表1】GVA(2018年)産業別農林水産業、32.4%他のサービス、20.0%輸送・倉庫・通信、8.3%商業・ホテル・外食、7.3%製造業、18.4%建設、5.7%電気・ガス等、1.9%鉱業・採掘業、6.0%(出所) State Committee of the Republic of Uzbekistan on Statistics(2019)【図表3】実質GDP成長率(前年比)の推移(年)(%)(出所)State Committee of the Republic of Uzbekistan on Statistics(2019)、    IMF(2019a)201720162015201420132012201120102009200820078.07.57.06.56.05.55.04.54.06.05.55.14.5ウズベキスタン国家統計委員会IMF予測予測 ファイナンス 2020 Feb.47ウズベキスタンにおける知的支援についてSPOT

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