ファイナンス 2020年2月号 Vol.55 No.11
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51年)、特別支援学校(平成18年)の創設など、時代の要請に応える形で様々な見直しが行われ、現在の学校体系に至っている(図1)。スイスも同様だが、日本において学生各々の希望などに応じて進学先が大きく変わっていくのは中学卒業以降である。すなわち、中学卒業後の進路については、高等学校、高等専門学校(高専)、高等専修学校などの進学、そして就職に分かれる。このうち、高等学校については、国語、地理歴史、公民、数学、理科、外国語などを中心に学ぶ普通科のほか、農業、工業、商業、水産、家庭、看護、情報、福祉などの各専門学科、普通教育及び専門教育の選択履修を通じ総合的に教育を行う総合学科に分かれる。実際の中学卒業者の進路状況について文部科学省「学校基本調査(令和元年度速報)」を見ると、就職者は全体の0.2%に過ぎず、99.1%は進学しており、このうち高等学校への進学は97.7%と大部分を占めている。また、高等学校の在学者ベース(全日制)でみると73.2%が普通科に在籍しており、以下、工業科(7.5%)、商業科(5.9%)、総合学科(5.2%)と続いている。戦後の学校体系の見直しによって、中学卒業以降の選択肢は多様になってきたものの、普通教育を行う高等学校普通科が大きな部分を占めているのが現状である。次に、高校卒業者の進路状況を見ると、就職者は全体の17.7%である中、54.7%が大学、短期大学等、16.4%が専修学校専門課程(専門学校)へ進学している。大学の学科別の学部学生数をみると、社会科学系が32.1%と最も多く、工学系(14.6%)、人文科学系(14.0%)と続いている。他方、短期大学の場合、教育系が36.6%と最も多く、家政系(17.6%)、社会系(10.3%)と続いている。専門学校の場合、看護系をはじめとする医療関係が31.2%と最も多く、文化・教養関係(21.3%)、工業関係(15.0%)と続いている。3スイスの職業教育の概要(1)全体像日本の教育体系を簡単に見たところで、次にスイスの教育体系について見てみよう。スイスの教育機関体系のおおまかな仕組みは図2のとおりであり、日本の(1)小学校にあたる初等教育(Primary)、(2)中学校にあたる前期中等教育(Lower Secondary)、(3)高校等にあたる後期中等教育(Upper Secondary)、(4)大学等にあたる第三期教育(Tertiary)の4つの構造で成り立っているが、その特色が目立つのは後期中等教育以降で重視されている職業教育である。前期中等教育を終えた学生の進学は、普通教育または職業教育に大きく分けられる。(2)後期中等教育の職業教育前章でも述べたとおり、日本では、中学卒業者のうち99%以上が進学し高校在学生の7割以上が普通科に在籍している状況であるが、スイスでは日本の高等学校にあたるバカロレアスクール(Baccalaureate Schools)に在籍する生徒は19.5%、中等専門校(Upper <図1> 日本の主な学校体系大学院(博士)大学院(修士)大学短期大学専修学校(専門課程)中等教育学校特別支援学校高等学校(普通科、専門学科、総合学科)専修学校(高等課程)高等専門学校(高専)中学校(注)このほか、専攻科、専修学校(一般課程)、各種学校がある。(資料)文部科学省資料より筆者作成。38 ファイナンス 2020 Feb.SPOT

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