ファイナンス 2020年2月号 Vol.55 No.11
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財務局が発足して70周年を迎えましたが、財務局は、昭和、平成、令和に至る時代の大きな流れの中で、社会経済情勢の変化に対応しつつ、財務省の総合出先機関としての役割を果たしてきました。私自身は、昭和59年に財務局に入局し30有余年が経ちました。財務局が辿ってきた長い年月の半分にすぎませんが、財務局発足70周年を迎え、これまでの勤務を通じて感じたことを振り返りつつ、財務局の使命と今後の役割について考えてみたいと思います。振り返ってみますと、30有余年のうち、本省、財務局、造幣局などの執行機関にそれぞれ3分の1ずつ勤務しましたが、本省でも国有財産行政に長く携わるなど、財務省を現場から支える財務局のことを常に念頭に置きつつ仕事をしてまいりました。入局当時は、高度成長期が終焉を迎える中、財政再建が謳われ始め、三公社の民営化が進められるなど、世の中が大きく変わろうとしていた時代でありました。その後、昭和から平成に変わる中で、バブルの時代が終焉を迎え、社会経済が大きく混乱することになりました。その中で、財務局では、不良債権の急増により立ちいかなくなった金融機関の破綻処理を進め、また膨大な物納財産を引き受け、管理処分を進めていく必要がありましたが、こうした処理を円滑に進めなければ、社会や経済に大きな混乱を招くことになるとの強い危機感から、財務局職員は怯むことなく、前例のない困難な業務に懸命に取り組みました。財務局は、当時も、職員が現場を駆け回り、地域の実情を把握しつつ、本省と一体となり、こうした困難な課題を乗り越えていきましたが、まさに地域に根差した総合出先機関としての本領を発揮したものと言えます。この10年を振り返りますと、リーマン・ショックという大きな波に襲われた後、疲弊した地域の経済や企業の再生に向けた取り組みを続ける中で、財務局は、従来以上に地域との関係を深めていくことになります。私が携わった国有財産行政を例に挙げると、国民共有の財産である国有地の地域における有効活用策について、財務局が地方公共団体と幾度に亘り協議し、中には、密接な連携の下、国有地の活用を通じて、街を人々が集い、行き交う拠点に再生させた事例もありました。東日本大震災が発生した際も、速やかに国有地や宿舎のリストを地方公共団体に提供し、被災地の方々からの様々な相談に真摯に耳を傾ける財務局職員の姿勢には感銘を受けました。こうしたDNAが引き継がれ、現在、財務局は、所管する業務にとどまらず、様々な地域の課題に向き合い、関係者との連携を通じて、その解決に向けて取り組んでいます。財務局がハブになり、様々な関係者が課題解決に向けて議論し、連携する場を創造する、若い職員が地域活性化に向けた施策作りのお手伝いをするなど、各地域において地域に根差した様々な取り組みが進められています。財務局は、財務省の総合出先機関でありますが、地域の一員でもあります。地域の方々とお会いする際に、必ず申し上げる言葉です。財務省の施策を地域で説明し、地域の実情を本省に報告するだけにとどまらず、地域で双方向の議論を展開し、自らも地域の課題解決に取り組む。令和の時代においても、こうしたDNAを適切に引き継ぎ、財務省の総合出先機関として、地域から信頼される財務局であり続けられるよう、弛まぬ努力を続けていくことが大事であると考えます。財務局の使命と今後の役割について ~地域に根差した総合出先機関~中国財務局長 橋本 徹32 ファイナンス 2020 Feb.SPOT

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