ファイナンス 2020年2月号 Vol.55 No.11
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れリスクを確実に乗り越え、我が国経済の生産性の向上や成長力の強化を通じて民需中心の持続的な経済成長の実現につなげていく。潜在成長率の引上げによる成長力の強化を目指し、Society 5.0時代に向けた人材・技術などへの投資やイノベーションを企業の現預金も活用して喚起し、生産性の飛躍的向上に取り組む。また、成長と分配の好循環の拡大に向け、企業収益を拡大しつつ、下請中小企業の取引適正化等を進め、賃上げの流れを継続して消費の拡大を図るとともに、外需の取り込みを進める。さらに、少子高齢化に真正面から立ち向かい、若者も高齢者も女性も障害や難病のある方も皆が生きがいを持ち活躍できる一億総活躍社会の実現に取り組む。このため、希望出生率1.8、介護離職ゼロ、「人づくり革命」及び「働き方改革」のための対策を推進しつつ、就職氷河期世代の人々の社会への参画機会を拡大していく。全世代型社会保障の構築に向け、社会保障全般にわたる持続可能な改革を進める。加えて、自然災害からの復興や国土強靱化、観光・農林水産業をはじめとした地方創生、地球温暖化などSDGsへの対応を含むグローバル経済社会との連携など重要課題への取組を行う。財政健全化に向けては、「新経済・財政再生計画」に沿って着実に取組を進め、2025年度の国・地方を合わせた基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化を目指す。同時に債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指す。令和2年度予算については、「経済財政運営と改革の基本方針2018」及び「経済財政運営と改革の基本方針2019」に基づき、歳出改革等に着実に取り組む。日本銀行には、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、2%の物価安定目標を実現することを期待する。3.令和2年度の経済見通し(1)令和2年度の経済の姿令和2年度については、総合経済対策を円滑かつ着実に実施するなど、各種政策の効果もあいまって、我が国経済は、雇用・所得環境の改善が続き、経済の好循環が進展する中で、内需を中心とした景気回復が見込まれる。物価については、景気回復により、需給が引き締まる中で緩やかに上昇し、デフレ脱却に向け前進が見込まれる。この結果、令和2年度の実質GDP成長率は1.4%程度、名目GDP成長率は2.1%程度と見込まれる。また、消費者物価(総合)は0.8%程度の上昇と見込まれる。なお、先行きのリスクとして、通商問題を巡る動向、中国経済の先行き、英国のEU離脱、中東地域を巡る情勢等の海外経済の動向や金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある。(2)各項目の見通し(ア)実質国内総生産(実質GDP)(i)民間最終消費支出雇用・所得環境の改善が進む中、総合経済対策の効果もあって、増加する(対前年度比1.0%程度の増)。(ii)民間住宅投資貸家着工の減少傾向の継続により、減少する(対前年度比1.9%程度の減)。(iii)民間企業設備投資総合経済対策の効果や人手不足への対応等もあって、増加する(対前年度比2.7%程度の増)。(iv)政府支出総合経済対策に伴う公共事業関係費や、社会保障関係費の増加等により、増加する(対前年度比1.8%程度の増)。(v)外需(財貨・サービスの純輸出)世界経済の緩やかな回復に伴い輸出が増加する一方、国内需要を反映して輸入が増加することにより、おおむね横ばいとなる(実質GDP成長率に対する外需の寄与度▲0.1%程度)。(イ)実質国民総所得(実質GNI)実質国民総所得(実質GNI)は実質GDP成長率と同程度の伸びとなる(対前年度比1.3%程度の増)。(ウ)労働・雇用雇用環境の改善が続く中で、女性や高齢者等を中心とした労働参加の拡大もあり、雇用者数は増加する24 ファイナンス 2020 Feb.特 集

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