ファイナンス 2020年2月号 Vol.55 No.11
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1. 令和2年度財政投融資計画の基本的考え方昨年12月5日に、(1)災害からの復旧・復興と安全・安心の確保、(2)経済の下振れリスクを乗り越えようとする者への重点支援、(3)未来への投資と東京オリンピック・パラリンピック後も見据えた経済活力の維持・向上を柱とする「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」が閣議決定された。この経済対策においては、現下の低金利状況を活かして財政投融資の手法を積極的に活用し、インフラ整備に対する超長期の資金供給を行うなど、成長への投資を活性化させる政策が盛り込まれている。また、海外発の経済下方リスクが顕在化する場合に備え、日本企業の海外展開を後押しする観点から、日本企業による海外M&Aやグローバル・バリューチェーンの再編等及び質の高いインフラ整備を支援することとなっている。(資料1)これを受けて、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構による、生産性向上のための新名神高速道路の6車線化整備の加速や、株式会社日本政策投資銀行による、無電柱化を含む送配電網整備といった安全・安心のためのインフラ強化や生産性向上に向けた取組、企業の海外リスク対応に必要な資金需要への対応等、総額14,503億円の財政投融資計画を、令和元年度補正予算において追加することとし、その政府案が12月13日に閣議提出された。続いて、令和2年度財政投融資計画(以下、「2年度計画」という。)も、12月20日に予算政府案とあわせ、閣議提出された。これは令和元年8月末に要求を受けた後、「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」も踏まえつつ、財政制度等審議会財政投融資分科会(以下、「財投分科会」という。)において審議を行ったものである。2.令和2年度財政投融資計画の規模2年度計画の総額は、13兆2,195億円である。このうち、リスクマネー供給等を行う産業投資の規模は4,510億円と過去最大となっている。この中では、成長力強化のための重点投資として、現下の低金利状況を活かした高速道路の整備及び成田国際空港滑走路の新設・延伸や、日本企業の海外展開支援などに取り組むこととしている。3. 令和2年度財政投融資計画の概要(資料2)(1)成長力強化のための重点投資2年度計画においては、成長力強化のための重点投資等に計画全体の50%超にあたる約7.2兆円を配分した。具体的には、低金利を活用したインフラ整備の加速と産業投資を呼び水とした民間からのリスクマネー供給促進等に取り組むこととしている。(ア)インフラ整備の加速等現下の低金利状況を活かして、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構において、今後発行を予定している政府保証債の一部を予め財政融資資金に置き換え、将来にわたる金利負担を補正計画と合わせて約1兆円軽減することにより、安全性・信頼性等の向上のための高速道路の暫定2車線の4車線化等を行うこととするほか、東日本高速道路株式会社、中日本高速令和2年度 財政投融資計画について理財局財政投融資総括課長 湯下 敦史16 ファイナンス 2020 Feb.特 集

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