ファイナンス 2020年2月号 Vol.55 No.11
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令和2年度税制改正については、昨年12月12日に与党における税制改正プロセスを経て、12月20日に「令和2年度税制改正の大綱」が閣議決定された。本稿においては、「令和2年度税制改正の大綱」の概要を中心に説明したい。なお、文中意見等にわたる部分は、筆者の個人的見解である。1.令和2年度税制改正の基本的考え方令和の時代において人口減少と少子高齢化が一層進む中にあっても、直面する様々な課題を克服し、豊かな日本を次の世代へと引き渡していかなければならない。このためには、社会保障をはじめとした諸制度を人生100年時代にふさわしいものへと転換するとともに、Society5.0の実現に向けたイノベーションの促進など中長期的に成長していく基盤を構築することが必要である。こうした観点から、令和2年度税制改正においては、持続的な経済成長の実現に向け、オープンイノベーションの促進及び投資や賃上げを促すための税制上の措置を講ずるとともに、連結納税制度の抜本的な見直しを行うこととしている。さらに、経済社会の構造変化を踏まえ、全てのひとり親家庭の子どもに対する公平な税制を実現するとともに、NISA(少額投資非課税)制度の見直しを行う。このほか、国際課税制度の見直しや納税環境の整備等を行うこととしている。具体的な改正内容等は以下のとおりである。2. 令和2年度税制改正における主な措置等(1)デフレ脱却と経済再生(ア)オープンイノベーションに係る措置経済成長の基盤となるイノベーションを持続的・自律的に生み出していくためには、企業自身が、その保有する内部資金や技術を有効に活用することが必要であるが、税制においても、こうした企業の前向きな行動を後押ししていく。具体的には、企業の事業革新につながるオープンイノベーションを促進する観点から、事業会社が次世代のイノベーションの担い手であるベンチャー企業に出資する場合に、出資の25%相当額の所得控除ができる措置を創設する(資料1)。(イ)5G導入促進税制5G(第5世代移動通信システム)は、Society5.0の実現に不可欠な社会基盤であり、安全性・信頼性が確保され、供給安定性、オープン性が保証された5Gシステムを構築する必要がある。こうした観点から、5G情報通信インフラの早期導入を促し、次世代の最大の資源となる「データ」を様々な分野・地域において利活用できる環境を整備するため、(1)超高速・大容量通信を実現する全国5G基地局の前倒し整備と、(2)地域の企業等が自ら5Gシステムを構築するローカル5Gへの投資について、15%の税額控除又は30%の特別償却ができる措置を創設する(資料2)。(ウ)投資や賃上げを促す措置企業マインドを変革させ、果断な経営判断を促す観点から、企業収益が拡大しているにも関わらず賃上げ令和2年度 税制改正(国税)について財務省主税局総務課 税制企画室長 内藤景一朗 ファイナンス 2020 Feb.7特 集

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