ファイナンス 2020年1月号 Vol.55 No.10
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最後に20年国債が先物の何枚に相当するかを考えてみましょう。例えば、先物1枚の(100円あたりの)BPVは11銭である一方、20年国債のBPVは19銭に相当します*43。そのため、20年国債のリスク量は先物の1.7枚分程度のリスク量を有していると解釈できます。*43) ここでは先物の受渡がなされる残存7年の国債については10年利付国債(第345回)、20年国債については20年利付国債(第170回)を用いたうえでBloombergを用いて計算しています。*44) 補論の作成にあたり藤原哉氏のサポートを受けています。記して感謝申し上げます。5.おわりに本稿は日本国債先物を中心に先物の基礎的な内容について記載しました。本稿で強調しましたが、先物の本質は取引所取引にあります。日本国債先物には細かい制度がありますが、複雑に見える制度の多くは取引所取引を成立させるための工夫と解釈できます。取引所取引であるがゆえ、多くの投資家の売買を取り込むことが可能になり、その結果形成される価格が国債市場で重要な意味合いを持つのです。本稿では先物の基礎的な内容をカバーしたため、次回はもう少し踏み込んで先物が実際にどのように用いられているかについて考えていきます。特に、日本国債市場との関係について考えるため、現物と先物の裁定について掘り下げて考えていきます。その中で、なぜ日本国債先物の現物決済において残存7年の国債が受け渡されるか、また国債先物と密接な関係を持つレポ市場との関係等について考えていきます。補論*446%フラットカーブで評価した際の受渡適格銘柄の価値をViとします(iは個々の受渡銘柄を指します)。次回利払い日から評価日へのディスカウント・ファクターをDF1とすると、DF1は下記の通りになります。DF1=1(1+0.062)c6-(b-1)c6-(b-1)は受渡日と次回利払い日での6か月基準での間隔を表します。図8における次回利払日の価格をV1iとすると下記が成立します。V1i=a2∑1(1+0.062)n-1+100(1+0.062)b-1=a20.062(1+0.062)b-1(1+0.062)b-1+100(1+0.062)b-1n=1b図8 コンバージョン・ファクターを導出するうえでのキャッシュフロー及び経過利子の流れ満期次回利払日評価日(受渡日)前回利払日(6-d)月d月評価日から利払が発生する回数=b経過利子の期間残存月数=c6か月73 ファイナンス 2020 Jan.連載日本経済を 考える

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