ファイナンス 2020年1月号 Vol.55 No.10
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この右辺は等比級数の公式にくわえ、日本取引所グループの公式ではcが月ベースであることから、この調整(12N=c)を用いれば、(4)はさらにP(1+0.062)c6=a0.06((1+0.062)c6-1)+100となります。上記の式をPについて解けば、(3)が出てきますから、無事に受渡銘柄の現在価値が(3)に一致することが示され、CFの導出が終わりました。最後に(1)の第2項について説明しますが、結論的にはこれは経過利子の調整部分です。10年利付国債の償還および利払いのタイミングは先物の限月と同様、3、6、9、12月に設定されているため、経過利子が出ないこともあるのですが、例えば3か月の経過利子が発生する可能性があります。CFの式(1)における第2項、すなわち、a(6-d)/1200は一見すると複雑に見えるため、見通しをよくするため、仮にクーポンの支払いが(半年に1回ではなく)1年に1回と想定します。この場合、この式はa(12-d)/1200のような形になります。dは次回利払日までの期間(月数)ですから、d=12の場合、利払いが1年後なので経過利子が全く発生せず、(1)の第2項が消えます。一方、d=0の場合、12a/1200=a/100となり、これは受渡銘柄の1年分のクーポンの値を標準物の現在価値で割っている状況です。このようにみれば、a(6-d)/1200の部分はCFにおいて経過利子を調整している部分と解釈できます。BOX 4 国債先物の金利リスク量金利リスクとは金利が変化することに伴い価格が変化するリスクを指します。実務的には金利リスクを測るうえでデュレーションなどが用いられますが、先物対比でみたリスク量を見ることも少なくありません。たとえば、保有している日本国債のリスク量を測るうえで、先物の何枚に相当するかを考えることでリスク量を測ることがあります。ここでは残存7年の国債が受渡されることを想定し、ベーシス・ポイント・バリュー(Basis Point Value, BPV)*39に基づき、国債先物の金利リスク量を考えてみましょう。BPVとは、1ベーシス(0.01%)だけ金利が変化した場合、価格がどの程度動くかを指します。先物価格をP、コンバージョン・ファクターをCF、残存7年の国債の価格をPCTD*40とすると、P×CF=PCTDが成り立つことを考え、金利感応度を考えるため、先物価格(P=1/CF×PCTD)を金利(r)で微分します。∆P∆r=1CF∆PCTD∆r∆PCTD/∆rが残存7年の国債のBPVになるため、1ベーシス金利が動いた際のリスク量は(100円あたり)7銭程度になります*41。先物のBPV(∆P/∆r)は「残存7年の国債のBPV/CF」で計算できるため、CFは0.7前後の値をとることを考えると、先物のBPVは(100円あたり)10~11銭程度になります。このことは先物のリスク量が残存10年の国債に近いリスク量を持つことを意味します*42。*39) BPVをDV01(Dollar Value of 0.01%, 0.01%のドルの価値)で表現することも少なくありません。タックマン(2012)ではPV01(Present Value of 0.01%)はスワップの固定金利が1bps変化したときのスワップの価値の変化と定義していますが、PV01をBPVと同じ意味合いで用いることもあります。*40) ここでのCTDは最割安銘柄(Cheapest To Deliver、チーペスト)を指しています。*41) 前注にも記載しましたが、固定利付債の場合、金利の変化に対する債券価格の価格感応度は概ね年限に一致します。例えば、1年債を保有しており、仮に金利が1bps変化した場合、1年間で100円に対して1銭分(=100円×1bps)の影響をもたらすため、価格はおおよそ1銭変化します。7年債の場合、その効果が7年間にわたるため、1年債のおおよそ7倍である7銭(=100円×1bps×7)程度、価格が変化します。*42) 前注を参照すると、10年債の場合、100円×1bps×10=10銭程度の変化になります。 ファイナンス 2020 Jan.72シリーズ 日本経済を考える 96連載日本経済を 考える

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