ファイナンス 2020年1月号 Vol.55 No.10
76/88

このBOXではCFを「受渡適格銘柄の現在価値=標準物の現在価値×CF」と定義しましたが、現在価値を算出するうえで6%のフラットカーブを前提としました。しかし、ここで6%フラットカーブで計算したCFを固定し、「受渡適格銘柄の(現在のカーブでの)現在価値=標準物の(現在のカーブでの)現在価値×CF」が成立するとします。この際、「標準物の(現在のカーブでの)現在価値」は現在市場で取引されている先物の価格そのものですから、「先物価格(=標準物の(現在のカーブでの)現在価値」)×CF」を計算することで「受渡適格銘柄の(現在のカーブでの)現在価値」を計算することができます。「先物価格×CF」で受渡価格を計算するとは、このような計算をしていると解釈できます。ちなみに、日本取引所グループのサイトではCFは下記のように定義されています*37。CF=a0.06×((1+0.062)b-1)+100(1+0.062)c6×100-a(6-d)1200…(1)ここでaは適格銘柄の年利子、bは受渡適格銘柄の受渡決済以降(当該受渡決済期日を除く)に到来する利払回数、cは受渡適格銘柄の受渡決済期日における残存期間(月数)、dは受渡適格銘柄の受渡決済期日から次回利払日までの期間(月数)になります。この式の意味合いを考えるため、まずは(1)の第一項について、下記のケース*38を用いて、考えてみましょう(正確な導出は補論を参照してください)。CF=a0.06×((1+0.062)c6-1)+100(1+0.062)c6×100…(2)まず、(2)の分母の100は標準物の現在価値に相当するため、「CF=受渡適格銘柄の現在価値/100」との対応関係を考えると、「受渡適格銘柄の現在価値」は下記のようになります。a0.06×((1+0.062)c6-1)+100(1+0.062)c6…(3)ここで、受渡適格銘柄が生み出すキャッシュフローを標準物の世界のカーブ(6%フラットカーブ)で割り引くことで、「受渡適格銘柄の現在価値」が(3)になり、CFが(2)となることを確認しましょう。受渡適格銘柄の利子はa(半年に1度、a/2の利子が発生)です。この銘柄の年限をN年とすると、6%のフラットカーブで将来のキャッシュフロー(クーポンa/2と元本100)を割り引くことで、受渡銘柄の現在価値(P)を計算できます。P=a21+0.062+a2(1+0.062)2+…+a2(1+0.062)2N+100(1+0.062)2N上記の式に(1+0.062)2Nを掛け合わせることで下記のように書き換えます。P(1+0.062)2N=a2(1+0.062)2N-1+a2(1+0.062)2N-2+…+a2+100…(4)*37) https://www.jpx.co.jp/derivatives/products/jgb/jgb-futures/02.htmlを参照ください。ここでは「X=(ⅱ)0.06(長期国債標準物)」のケースを取り上げています。*38) c=6bのケースを考えています。71 ファイナンス 2020 Jan.連載日本経済を 考える

元のページ  ../index.html#76

このブックを見る