ファイナンス 2020年1月号 Vol.55 No.10
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3、6、9、12月の4つの限月がありますが、上場されているものは直近の3つになります。例えば、現在が2020年1月であるとすると、2020年3月限、2020年6月限、2020年9月限が上場しています。2020年3月限の売買が終わると、新しい先物(2020年12月限)が立ち上がる仕組みになっています。国債先物市場では満期の近い限月(この例の場合、2020年3月限)がもっぱら売買される傾向にありますが、最も活発に売買がなされる限月を中心限月といいます*20。先物の投資家は近い限月の先物(この例の場合、2020年3月限)を売買していますが、この先物の取引最終日が近づくにつれて、通常*21、その次の限月(この例の場合、2020年6月限)へ売買がシフトしていきます。その意味で、上場している個別の先物は9か月間上場するものの、事実上、3か月間しか*20) 日本国債先物は限月が異なる先物が複数上場していますが、基本的には似た動きをするため、満期が近い先物に売買が集中しています。現物と先物の裁定においてレポ取引が重要な役割を果たしますが、期間の長いSCレポ取引の流動性が低いこともその原因として挙げられます。*21) 例えば、1999年には「先物市場では、8月に入り中心限月が99年9月限から12月限をスキップして2000年3月限に移行するという異例の事態が発生した」(重見等, 2000, p.4)という事例もあります。詳細は重見等(2000)を参照してください。*22) BloombergではJB1 Comdtyというティッカーを用意しており、これをもちいれば中心限月をつないだデータを取得することができます。*23) 指値注文とは先物の売買注文をする際、自分の売買したい価格を明示して注文をすることです。一方、成行注文とは、価格を明示せず、銘柄と数量のみを指定して注文をすることです。*24) ベスト・オファーという表現を使うこともあります。売買されません。なお、図3のように先物の時系列データを用いる場合は、中心限月の先物価格をつないだデータを用いる必要があります*22。サーキット・ブレイカー国債先物にはサーキット・ブレイカーが設けられています。サーキット・ブレイカーとは価格が一定以上の変動を起こした場合、強制的に取引を止めるなどの措置を採る制度であり、過度な値動きを抑制することが目的です。日本国債先物については相場が過熱した際、取引を一時的(10分間)中断させることで過熱感を鎮めることを企図しています。サーキット・ブレイカー制度そのものは1987年における米国市場の大暴落(いわゆるブラックマンデー)の経験を受けて作られた制度です。BOX 2 板とは先物では板を見ることができる点も大きな特徴です。板とはコンピュータ画面上に表示される値段毎の売買の注文であり、例えば図5のような形で表示されます。図5の右側(左側)に表示されている買指値注文*23(売指値注文)は国債先物に対する買い(売り)注文が値段毎にどれくらい入っているか(何枚入っているか)を表示しています。これらは投資家がこの値段で買いたい(売りたい)という注文が入っているだけであり、売買が未だ成立していない状態です。もし読者が1枚買い(売り)注文を出した場合、買い手(売り手)にとって最も有利な価格である150.00円(149.99円)で取引は成立します。このケースでは150.00円(149.99円)が買い手(売り手)にとって最も有利な注文ですが、このような価格をベスト・アスク*24(ベスト・ビット)といいます。図5 日本国債先物の板のイメージ売指値注文価格買指値注文40150.0430150.0320150.0210150.015150.00149.9910149.9820149.9730149.9640ベスト・アスクベスト・ビット板の数字をみれば自分の売買により価格がどの程度変化するか推測できます。たとえば、図5におい ファイナンス 2020 Jan.66シリーズ 日本経済を考える 96連載日本経済を 考える

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