ファイナンス 2020年1月号 Vol.55 No.10
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方の下、補正予算を新たに編成し、予備費を含めた今年度予算と来年度の臨時・特別の措置を適切に組み合わせることにより、機動的かつ万全の対策としております。令和元年度補正予算においては、経済対策を実行するための歳出として、約4.3兆円を計上するほか、所要の追加財政需要に対応することとしております。また、令和2年度当初予算においては、消費税増収分を活用した社会保障の充実、経済対策の着実な実行、歳出改革の取組の継続により、経済再生と財政健全化を両立する予算としております。具体的には、社会保障については、全世代型社会保障制度の構築に向け、消費税増収分を活用し、昨年10月から実施している幼児教育・保育の無償化等に加えて、本年4月から、高等教育の無償化、予防・健康づくりの取組など医療・介護分野の充実を実施してまいります。また、国土強靱化については、補正予算で、台風15号、19号等を踏まえ、水害対策を中心に国土強靱化の取組をパワーアップし、総額1兆円超の国土強靱化関係予算を計上するとともに、令和2年度当初予算においても、「臨時・特別の措置」により、「3か年緊急対策」の3年目に必要な予算措置として1兆円超を計上し、ハード・ソフトの両面から対策を着実に実行していきます。加えて、経済対策を着実に実行する中では、東京オリンピック・パラリンピック後も見据えて、マイナンバーカードを活用した消費活性化策などを通じて、個人消費や投資を切れ目なく下支えいたします。令和2年度税制改正は、人口減少や少子高齢化等困難な課題に直面する中においても、財源を確保しつつ、日本経済の成長を確実なものとしていくものとしております。具体的には、持続的な経済成長の実現に向け、オープンイノベーションの促進及び投資や賃上げを促すための税制上の措置を講ずるとともに、連結納税制度の抜本的な見直しを行うこととしております。さらに、経済社会の構造変化を踏まえ、全てのひとり親家庭の子どもに対する公平な税制を実現するとともに、NISA制度の見直しを講じることとしております。このほか、円滑・適正な納税のための環境整備等を行うこととしております。引き続き、我が国財政は、プライマリーバランスの赤字が続く中、国・地方の債務残高がGDPの2倍程度に膨らみ、なおも更なる累増が見込まれるなど、厳しい状況にあります。令和2年度予算においても、歳出改革にしっかりと取り組むことで、新規国債発行額を安倍内閣発足以来8年連続で減額しております。今後も、全世代型社会保障の構築には社会保障や財政の基盤がしっかりとしていなければならず、「新経済・財政再生計画」に沿って歳出改革等を進め、経済再生と財政健全化の両立を図り、2025年度の国・地方を合わせたプライマリーバランスの黒字化、同時に債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指してまいります。国際金融においては、昨年、日本はG20の議長国を務め、6月に福岡で開催された財務大臣・中央銀行総裁会議等において、高齢化、グローバル・インバランス、質の高いインフラ投資、債務問題やユニバーサル・ヘルス・カバレッジなど、数多くの議題を取り上げました。今年は、議長国はサウジアラビアに引き継がれますが、日本議長国の成果の礎にたって、国際課税やグローバル・ステーブルコインを中心とする暗号資産などの諸課題に対応するべく、貢献を続けてまいります。最後に、昨年6月に、秋池参与のお力添えを頂き、多くの職員の参加の下、「国の信用を守り、希望ある社会を次世代に引き継ぐ」という財務省の組織理念が出来上がりました。これを踏まえ、引き続き、コンプライアンス確保のための取組を徹底して進め、令和の時代にふさわしい組織へと改革していくことが重要と考えております。そうした改革を進めつつ、様々な政策課題に対応するため、本年も、副大臣・政務官とともに全力で取り組んでいくことをお誓い申し上げ、新年の挨拶とさせていただきます。 ファイナンス 2020 Jan.2

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