ファイナンス 2020年1月号 Vol.55 No.10
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あけましておめでとうございます。令和2年の年頭に当たり、謹んで新春のお慶びを申し上げますとともに、我が国の経済財政運営等につきまして所感を述べさせていただきます。現在、日本経済は、7年にわたるアベノミクスの推進により、デフレではない状況を作り出す中で、GDPは名目・実質ともに過去最大規模に達しており、内需を中心に緩やかな回復基調にあります。また、雇用・所得環境も改善し、2000年代半ばと比べて景況感の地域間のばらつきも小さくなっているなど、地方においても、好循環の前向きな動きが生まれ始めています。さらに、グローバル面では、訪日外国人旅行者数が3,000万人を超え過去最高となり、TPP11や日EU・EPA、さらには日米貿易協定の発効によりグローバルな場でのチャンスが広がっています。一方で、海外環境に目を転じると、米中貿易摩擦など通商問題を巡る動向、中国経済の先行き、英国のEU離脱の動向など、様々な不確実性が存在し、海外発の経済の下方リスクにはより一層注意が必要です。これに加えて、昨年は、令和元年台風第15号や第19号などの自然災害が相次ぎ、広範囲にわたり甚大な被害が発生しました。地域の方々の生業や観光といった経済活動も大きな影響を受けています。このように、日本経済が緩やかながら回復基調を保っている中で、海外経済を要因とした先行きリスクが視界に入りつつある今こそ、対処療法の受け身の対応にとどまらず、Society 5.0の実現に向けた国民各層の未来へのチャレンジをさらに加速する必要があります。これにより、リスクに対して強靱な経済構造を構築し、経済の力強い成長軌道を確実なものとしていかなければなりません。また、いつでも起こり得る自然災害に対して、国民の命や生活の安全を確保することが求められています。「経済再生なくして財政健全化なし」の認識の下、財政健全化目標の実現、安心できる社会保障制度の構築のためにも、しっかりとした経済成長が不可欠です。政府が果断な政策を講じることで、これまでのアベノミクスの成果を前進・加速し、デフレ脱却と経済再生への道筋を確実なものとする必要があります。政府は、このような考えに基づき、昨年12月、「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」を策定しました。本経済対策では、(1)災害からの復旧・復興と安全・安心の確保、(2)経済の下振れリスクを乗り越えようとする者への重点支援、(3)未来への投資と東京オリンピック・パラリンピック後も見据えた経済活力の維持・向上を柱として、そのために必要な事業を取り纏めています。そして、「15カ月予算」の考え令和2年1月財務大臣年頭所感財務大臣麻生 太郎1 ファイナンス 2020 Jan.

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