ファイナンス 2020年1月号 Vol.55 No.10
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例えば、「四つの与え」とは、「人間性、知識、情報、お金」のことです。創業当時、私はお金もなく、知識もありませんでした。では、自分は何を与えられるのかと思い、まずは人間性、すなわち笑顔、元気だと思いました。「渡邉さんといると元気になるね。」と言われるような人間性、そういったところから始めました。また、今のようにサーチエンジンがなかった時期に情報を自分で集めて人に提供することもしました。人間性、知識、情報、お金の順で人に与える、というのが「四つの与え」です。この10項目の考え方以外にも、「自然環境保護と雇用創造(Eco & Employment)」などという会社の大義や理念をもって経営を行っています。●「未来ノート」の継続次に「未来ノート」の継続です。ノートに書く内容は、従業員から上がってくる課題やトラブルに関するものです。1週間に一回従業員全員から声を上げてもらうようにしています。声を上げてもらうとノートが埋まるので、書くモチベーションが上がります。これは私にとって御馳走よりもおいしいものです。そうした声を一つ一つノートに書き込んでいくのです。一人一人の声に真摯に向き合って回答すると、それが社員の方にも伝わり、また一生懸命に声を上げてくるのです。こうして会社が良い方向にぐるぐる回り始めます。このスタートとなるのがノートなのです。私は書くことが好きで、このノートをずっと書き続けています。1日3時間から5時間かけてこの「未来ノート」を書き続けて、これを30年間継続しています。これがとても役に立っているのです。私が現在預かっている従業員は2,600人ですが、そのうち半分ぐらいは家族を持っている、そうなると5,000人の命を預かっているのと同じです。そう思うだけでもすごく大きなプレッシャーを感じます。しかもその上に色々なトラブルが毎日生じてきます。ある時には会社が潰れてしまいそうな状況になることもあるのです。そんな状況でどうやって持ちこたえられるかと言うと、ノートを書いているからなのです。私は、200ページのノートを1か月で書き終えます。ノートを書きながら、「会社は潰れない」と30年間自己暗示しています。確かに、会社を経営していると心配事は山ほどあります。しかし、不安を気にし始めると、経営にまで手が回らなくなります。これではまずいのです。ノートを読み返すと、私がこれまで抱えていた不安は、全て杞憂だったことが分かりました。そのため、途中から無駄な心配をすることは止めました。書き溜めたノートを死ぬ1年前から全部読み直す、これが私の最後の喜びです。●怒らず、原因を確認また、我が社では働く精神疾患の方に手厚いサポートを行っていますが、重症の方の場合、そのサポートも難しくなります。そこで、重症化する前に手を打とうと実施したことがあります。これはNHKでも紹介され、反響もありました。私が実施したのは、「日頃起こっている些細な問題に対して怒らないこと」です。これだけです。精神疾患には必ず前兆があります。毎日まじめに仕事をしている部下がいきなりミスをしたとか、いきなり休み始めたとします。ミスをしたら普通は叱りますね。しかし、私は叱らずに「どうした?」と尋ねるのです。自律神経がバランスを崩して壊れる。これはストレスによるものです。私は50歳代ですが、50歳代は、うつ病の発症が多いのです。50歳代になると、親の介護、仕事の問題、病気の問題、子供の問題など様々な悩みを抱えます。どんなに強い人でも3つぐらい強いストレスを受けると、自律神経のバランスを崩すそうです。寝られなくなったり、ミスを犯したり、会社-5-というと、年半盛和塾で学んだ哲学だったと思うのです。なお、我が社では、アイエスエフネット哲学という項目を社員と復唱して実践しています。です。私は書くことが好きで、このノートをずっと書き続けています。日時間から時間かけてこの「未来ノート」を書き続けて、これを年間継続しています。これがとても役に立っているのです。私が現在預かっている従業員は人ですが、そのうち半分ぐらいは家族を持っている、そうなると人の命を預かっているのと同じです。そう思うだけでもすごく大きなプレッシャーを感じます。しかもその上に色々なトラブルが毎日生じてきます。ある時には会社が潰れてしまいそうな状況になることもあるのです。そんな状況でどアイエスエフネット哲学アイエスエフネット哲学45 ファイナンス 2020 Jan.連載セミナー

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