ファイナンス 2020年1月号 Vol.55 No.10
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度合いの高まりとともに、市場も拡大していく。こういうことを見て、私はインターネットで起業しようと決めたのです。インターネットはネットワークですので、ネットワークエンジニアが不足すると考え、米国の情報も把握した上で、これは成功すると判断しました。そこで、インターネットのネットワークエンジニアを育成する事業を始めることとしたのです。そこで経験ゼロの人間を一人前のネットワークエンジニアに育てるための教育のノウハウを得るべく、DECの社内エンジニアと友達になり、彼らから教育のノウハウを学びました。(2)小さな会社の代表取締役副社長時代会社立ち上げの前に、DECを退社し、先輩の小さな会社に入社して3年半経営を学びました。実は、先輩の会社に入るまでの2年間、つまりDECにいた10年間の最後の2年間はDECでの業務終了後、無償でこの会社のお手伝いをしていました。この2年間の実績をもって代表取締役副社長に就任させていただきました。実は、この肩書をもらうことに意味があったのです。当時、稲盛和夫さんが開いていた盛和塾という経営塾に入塾したかったのですが、代表取締役という肩書が入塾の条件でした。一方で、私が負うことになったリスクが一つありました。この会社には2億4千万円の借金がありました。私は、代表取締役副社長として、その連帯保証人になり、借金を負うことになりました。このリスクを負うことで、私は盛和塾で稲盛和夫さんから直接薫陶を受け、自分にとっての大きな財産を得ることができました。なお、8年後には、その借金も全部返済し、事なきを得ました。ここまでが2001年1月に会社を設立するまでの経緯となります。4.ビジネスモデル(1)「30大雇用」についてこれから我が社のビジネスモデルを説明していきますが、その前に「30大雇用」について先に説明します。「30大雇用」というのは、私が雇用した人たちのカテゴリーです。「5大採用」(ニート・フリーター、障がい者、ワーキングプア、引きこもり、シニア)から始まり、順に「10大雇用」(障がい者手帳が交付されない軽度の障がいを持つ人、DV被害者、難民、ホームレス、小児がん経験者)、「20大雇用」(見た目がユニークな方、感染者の方、麻薬・アルコール等の中毒経験者、LGBT、犯罪歴のある方など)、「25大雇用」(破産者、生活保護、失語症、無国籍など)、「30大雇用」(父子家庭・母子家庭、記憶障がい、就労国の言語ができず専門スキルがない外国人、不妊治療中の方など)まであります。ここでは「採用」は受動的、「雇用」は能動的、という意味で使っています。(2)無知識・未経験のエンジニアの育成では、我が社のビジネスモデルの話に戻ります。無知識・未経験という一番下のレベルから入社させて、初級エンジニアにして、次に中級エンジニアにするのが我が社のビジネスモデルです。実は、無知識・未経験の者の65%は異業種から来ています。会社設立当時、ITエンジニアは経験者しか採用しないというのが一般的だったので、無知識・未経験者はどこも採用していませんでした。ですから我が社には異業種の人でエンジニアになりたかった人がたくさん来ました。こうした人達は地頭が良かったので、中級エンジニアになると、もれなく大手に引き抜かれていきました。現在の社員は2,600名ほどですが、社員番号は1万人分あります。これまで1万人採用してきたということです。そのうち1,000人は勉強に付いていけずに辞めました。残り6,400人はIT業界に送り出しました。最初に教育コストをかけると、大手が引き抜く際には高い給料で引き抜かれていきます。我が社の大義は「自然環境保護と雇用創造(Eco & Employment)」ですから、私はそれでよいと考えています。(3)「5大採用」 - 想定外の人たち無知識・未経験者のうち異業種から来た65%を除いた残りの35%が先程申し上げた「5大採用」、すな ファイナンス 2020 Jan.42上級管理セミナー連載セミナー

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