ファイナンス 2020年1月号 Vol.55 No.10
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5.これからのエス・バード以上のようにエス・バードは、様々な仕掛けとイベント開催等により徐々に地域内外での存在感を高めているところです。今後も多様な方が集まる施設に向けて、短期・中長期で一層の振興を図ります。例えば、将来の産業の担い手育成にもつながるSTEAM教育(理数・デザイン教育)を行う空間についても構想を練っているところです。5 地方創生の現場から最後に、私が地方に出て学んだこと、感じたことについてです。1.新産業の創出・発展のために地方で特色ある新産業を創出・発展させるためには、大学や研究機関・試験所、企業や行政を集積させる一貫した体制を構築すること、また環境試験のようなニッチな分野に地方が取り組むには、毎年全国から飯田に集まるシンポジウムのようなプラットフォーム化を図る仕掛けづくりが大切であることを学びました。2.持続させるために産業や地域振興施策が持続するためには、企業や地域の皆さんなどの主体となる方が活用しやすいよう支援すること、そして主体となる皆さんに「自分事」だと捉えてもらうことが必要だと学びました。エス・バードも結局の利用主体は、地域の企業や住民の皆さんです。利用者の意見を伺い、自分事として使っていただけるよう、行政はその整備や周知、イベントの実施などを一緒になって進めていくことが役割と考えます。3.財務省も地方の現場へ全国の市町村はそれぞれの創意工夫で様々な課題に先進的に取り組んでおり、そこには社会課題解決のヒントがたくさん存在します。また政府の支援策が行き届いていない点などもリアルに感じ取れることがあります。それら気付きを得られること、予算や税制、経済調査や金融検査など、財務省の施策に生かせる部分も多々あることから、機会があれば、財務省の皆さんにも是非地方の現場に飛び出してほしいと考えます。4.仕事とプライベートの境界着任以来、土日含めイベントや地域活動がたくさんあり、改めて市職員と地域の密接さを感じています。地域行事への参加は、一緒になって地域を盛り上げる観点から大切で、地元のお祭りから、耕作放棄地での大豆栽培、炭焼きもしました。昼は部長級職として議会で答弁しても、夜は地域の消防団の下っ端団員です。このように私自身も市職員でありますが、同時に地域の一住民です。そのことを忘れないよう常に心掛けています。一方で、プライベートなのか仕事なのか、それらの境界が曖昧になることもしばしばです。明確に切り分ける必要はないのかもしれませんが、案外心の休まる場面がないかもしれません。消防団花火警備炭焼き大豆栽培本会議答弁消防団花火警備炭焼き大豆栽培本会議答弁 おわりに ~地域で生き、地域を守ること~私自身、派遣開始から1年半で様々な経験をさせていただきました。エス・バードの始動から利活用促進、航空機産業の環境試験などは、財務省ではまず経験できない分野です。企業の社長さんから直接お聞きする経営理念には感銘を受けっぱなしです。国の施策の市町村への“届き方”を知る機会も霞が関の勤務だけでは得難いものです。地域に出て、一緒になって悩み、考えることの大切さや素晴らしさを真に実感しています。一方で人と人が近すぎるが故の難しさや、都会に出て行った若者が地元を離れた理由として挙げるしがらみも少し理解できたところです。以上、私が飯田市で学び、感じたことですが、そのような環境に身を置く中で、最後にひとつ、地域で生き、地域を守るとは何か、考えさせられた出来事がありました。昨年のゴールデンウィークの3連休の2日目、お昼頃に山火事があり、消防団で招集されました。基本35歳以下の若いメンバーで構成される消防 ファイナンス 2020 Jan.36地方創生の現場から【第8回】

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