ファイナンス 2020年1月号 Vol.55 No.10
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いています。食品棟は、甘さや酸味など「味」を見える化できる味覚センサー等といった、中小企業が利用したくても自社だけでは導入しにくい機器を備えることで、自社製品の特長の把握や販路開拓、他社との比較による味の改良などに活用いただいています。このように、試験機器を通じた多様な産業の振興に取り組んでいるところです。3.コワーキング空間「共創の場」また企業の方だけでなく「地域の皆さんの施設」であることの周知も大切と捉え、家族連れや中高生など、多様な方が集まる空間づくり、各種イベント開催やPRにも取り組んでいます。誰でも気軽に利用できる「共創の場」というコワーキングスペースでは、フリーWi-Fiや、個人・グループ向け学習室、こたつや畳、壁一面鏡の部屋などを備えており、地元中高生の勉強やグループワーク、社会人の設計図面作成の仕事、地元主婦の皆さんのヨガ教室など、各自がやりたいことをやる自己実現の場として、徐々に活用され始めています。将来的には、多くの人が対流し、例えば、視察に来た航空会社と食品企業が偶然出会い、自習する高校生に「食べたい機内食」をアンケートして共同開発する、といったような“共創によるイノベーション”が利用者主体で生まれていくような空間にしたく、その仕掛けづくりに向けて、まずは多様な方が集まる空間を目指しています。4.産業の担い手の醸成さらにエス・バードは、企業と将来の地域や産業の担い手との交流の創出にも寄与しています。エス・バード全体を企業の展示ブース・説明会場とし、高校生やその保護者に地元企業を知っていただく「企業展示説明会」では、参加企業83社、地域内外の高校等10校、生徒500名以上の参加となり、また仕事への関心や地域への愛着を醸成する「お仕事キッズタウン」では、約2,000人超える親子が職業体験をするなど、地域産業の担い手醸成に寄与したところです。また飯田市では、企業が社内の会議室等を高校生に開放することで、高校生に企業を知ってもらい交流する「つなぐ事業」にも取り組んでいます。本事業は33社が参加し、食品企業が自社製品を使って高校生と共にスイーツカフェを開設したり、金属加工技術によるコマづくりなどにより、企業と高校生を“つなぐ”環境を創出しています。エス・バードは現状ではつなぐ事業の運営会議等で利用いただいている段階ですが、今後は本事業に参加したくても空き部屋がない企業が高校生等と交流するひとつの拠点となればと考えています。35 ファイナンス 2020 Jan.

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