ファイナンス 2020年1月号 Vol.55 No.10
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空機産業に取り組む地元企業から招聘した教授が「装備品認証特論」等の特徴的かつ実践的なカリキュラムを提供し、2年間この飯田の地で学べば、修士号を取得できることになっています。2019年春の初の卒業生は、大手重工業企業の航空機部門に就職するなど、一歩ずつ成果が出始めているところです。5.国内唯一の環境試験機器整備実証試験に関しては、エス・バードに入居する産業支援機関の公益法人が担っています。航空機はマイナス40℃の上空1万mや赤道直下の50℃の砂漠、時には乱気流や雷雲など過酷な環境を飛ぶことから、搭載する装備品には国際的な安全試験が必要です。しかし設備がないことから、国内の企業は試験の大半を海外で実施している状況です。そこで、国内で航空機産業を振興したい経産省やJAXA、産業界の後押しも受け、航空機産業に不可欠で日本でここにしかない着氷試験機器や防爆試験機器等を、内閣府の地方創生交付金等を活用しながらこれまでに3台整備し、計5台整備予定です。これから成長する航空機産業において、日本で唯一試験ができるのが飯田となれば、全国からこの地への試験での来訪、企業等の集積が期待されるところです。4 エス・バードの発展1.オープンに向けてエス・バードの円滑な始動に向けては、リニア到来時の地域産業の姿について、企業等の皆さんと意見交換して「産業振興ビジョン」を策定し、また運営面におけるシミュレーションとそれに基づく予算設計、関係機関等との調整を進めてきました。そして2019年3月、地域の皆さんの想いが結実したエス・バードが全面オープンしました。国・県・研究開発等の来賓を招いての記念式典や、地域の皆さんにお楽しみいただけるオープニングイベントには3,500名以上の家族連れや地元中高生など、大変多くの方にお越しいただきました。2.環境試験のプラットフォームづくりまたオープン後は、エス・バードの価値を高め、企業や地域の皆さんによる利活用が進むよう日々取り組んでいます。昨年10月には国内初の航空機の環境試験技術に特化したシンポジウム「ASES2019」を開催しました。航空工学の第一人者である東京大学の鈴木真二先生にコーディネーターをお願いし、ボーイング社や国交省、経産省等によるここでしか聞けない航空法や市場・開発の最新動向の解説、技術者間や産官学との交流の場を設け、全国よりお越しいただき大変盛況でした。この開催により、シンポジウム参加者も一緒になって、これから飯田のエス・バードを拠点に国内の航空機システム産業を盛り上げていこうという機運の醸成を図ることが出来ました。早速エス・バードに整備した試験機器への問合せや、関係機関との新たな連携も始まったことから、その分野でのプラットフォーム化を目指し、毎年飯田に集まる仕掛けづくりをすることが大変重要だと実感したところです。また試験所は他の製造業や食品企業にも活用いただ ファイナンス 2020 Jan.34地方創生の現場から【第8回】

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