ファイナンス 2020年1月号 Vol.55 No.10
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地方創生に積極的に取り組む自治体(原則人口10万人以下)に対しては、国家公務員や大学研究者、民間人材を、市町村長の補佐役として自治体に派遣しています。本記事では、こうした制度などを通じて2018年度以降に財務省から各地に派遣された職員から、現地の概況や地方創生の取組について紹介します。地方創生の現場から【第8回】4時間が45分になる未来に向けて~エス・バードにおける産業振興と人材育成~長野県飯田市 産業経済部 参事 寺田 仁史 はじめに2018年7月より、長野県飯田市に出向しております寺田と申します。私は、市町村に国家公務員等を派遣する「地方創生人材支援制度(内閣府)」により派遣されておりますが、派遣直前まで内閣府で当該制度の担当をしていました。今回ファイナンスへの寄稿の機会を頂戴したことから、国と地方、それぞれの最前線に身を置いて学んだこと、感じたことを皆さんに共有させていただければと存じます。なお本稿の内容及び意見等については、個人の見解によるものです。1 飯田市の紹介1.飯田市ってどんなところ飯田市は、長野県の南に位置し、人口約10万人(県内4番目)、面積は約658m2と東京23区(627m2)よりも広く、全市域の約85%を森林が占めるなど、自然豊かな市です。街中には昭和の大火からの復興のシンボルである「りんご並木」、昨年秋に開通した自動車専用道路の下に歩道を設けた「天龍峡大橋」、太陽光や小水力発電等の「環境産業」、主力産業である「精密機械・電子産業」や、全国シェア4割の半生菓子や味噌・漬物等の「食品産業」、全国シェア7割の水引等の「伝統産業」等が多種多様に存在する地域です。特に「りんご並木」については、1947年の飯田大火で街の約8割(約60万m2)が焼失した教訓から、延焼防止のために街を四分する形で設けた「防火帯」に、地元中学生のアイデアでりんごの木が植えられたものです。1953年以降、中学生により手入れされ、毎年秋に実るりんごは、地域の関係者に配られるプライスレスな贈り物として親しまれています。他にも様々な催しがあり、毎年8月に行われる「いいだ人形劇フェスティバル」は、世界各地から人形劇団が集まり、開催期間中、市街地の路上や公民館・ホール等といった市内各地で誰でも人形劇を楽しむことができる世界的なイベントです。毎年11月3日の文化の日には、サブカルチャーの祭典「飯田丘のまちフェスティバル」が開催されます。フィギュアやコスプレ、クラシックカーやキャラクターでデコレートされた「痛車」などが市街地を埋め尽くし、毎年アジアや欧州からも多くの方が訪れます。2018年には、中心市街地にあるラウンドアバウトを自動走行し、車内でXR技術のキャラクターが観光案内をする実証実験を行うなど、文化と最新技術が融合した一大イベントにもなっています。また飯田市は市民主体のまちづくりに積極的な市です。合併した20町村が今なおコミュニティを維持し、ナミキちゃん※飯田丘のまちフェスティバルキャラクター29 ファイナンス 2020 Jan.

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