ファイナンス 2020年1月号 Vol.55 No.10
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る責務があること。この場合、租税正義を実現するために、取引の実質や経済実態に即した課税を行うべきであるとともに、大量で反復的な課税処分を行うために、形式的、画一的処理が不可欠であること。(3)迅速かつ効率的に租税の賦課・徴収を行う責務があること、といった特質ないし責務があると言われている*14。これらの責務の実現はそれぞれ困難を伴うものであり、例えば、税務行政において数多くの通達(解釈通達)が発遣されるゆえんでもある*15。国の税務行政の行政主体である国税庁が、これらの困難な責務を負う中で前述した使命や任務を果たすために、税務大学校としては、研修環境の整備に努めつつ、今後とも税務職員が職務遂行に必要な専門知識・技能を習得できるような研修を提供したいと考えている。また、言わずもがなであるが、税務職員は、納税者の皆様に信頼されるために綱紀の厳正な保持や適切な事務処理に努める必要がある。税務大学校としても引き続き税務職員としての心構えや人格の陶冶に資するような研修を行っていく考えである。最後に、税大研修と職場研修を通じ、先輩職員が後輩職員のために積極的に教育・研修を行う国税組織の「良き伝統」に敬意を表して本稿を終えたい。(なお、文中意見にわたる部分は筆者の私見である。)*14) 田中治、他『租税行政と権利保護』(ミネルバ書房,1995年)27-28頁*15) 下村芳夫『租税法律主義をめぐる諸問題』(税務大学校論叢第6号,1972年)38-39頁、新井隆一『通達行政と税法通達のあり方』(税経通信50巻8号,1995年)6頁 ファイナンス 2020 Jan.28国税組織における研修の現状と今後の展望 SPOT

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