ファイナンス 2020年1月号 Vol.55 No.10
31/88

(1)税務行政に特化した研修機関(税務大学校)があること、(2)税務職員のキャリアを通じて、適切な内容の研修の機会が提供されていること、(3)採用形態やポストに関わらず、全職員に研修の機会が与えられていること、(4)部内職員が研修講師を務める、いわば部内完結型に近いこと、の4点が挙げられると考えている*9。更に、このような特色を活かしつつ培われてきた研修のノウハウは、国税庁によるアジアやアフリカの開発途上国に対する研修の実施(例えばISTAX(国際税務行政セミナー))として国際協力にも貢献していると考えられる。3研修制度の課題と今後の展望以上のとおり、国税組織における研修は充実しており、税務職員に対して概ね適切な体系・内容となって*9) 各国国税組織の人事制度の違いによるところもあるが、本文2の(1)から(4)までの特色を兼ね備えた研修制度は少ないのではないかと考えられる。長期出張者からの報告等によれば、例えば、税務行政にかかる研修を一元的に担う研修機関が存在しない(米、加、豪)、税務行政に特化した研修機関がない(仏)、幹部職員だけを研修対象としている(独、中)、などである。また、東南アジア諸国では、研修機関は設置されていても、講師の多くがOECD等の国際機関やIBFD(国際税務研究会)等の民間組織から派遣されている国が少なくない。いると考えられるが、今後も国税庁が経済社会の変化に的確に対応し、その使命を果たしていくためには、研修制度についても時代の変化や国税庁の取組に対応すべく不断の見直しを続けていく必要がある。国税庁においては、ICT・AIの進展、マイナンバー制度の導入、経済取引のグローバル化、調査・徴収の複雑・困難化といった環境変化の中で、今後とも納税者の皆様の理解と信頼を得て適正な申告・納税を確保していくため、2017年6月に「税務行政の将来像~スマート化を目指して~」を公表し、ICT・AIの活用による、納税者の利便性の向上及び課税・徴収の効率化・高度化を、概ね10年後に目指すべき将来像として掲げている(図表3参照)。その具体的施策の一つとして調査・徴収でのAI活用が挙げられており、庁・局において、AIやBI・BA図表3詳しくは、税務行政の将来像~スマート化を目指して~ ファイナンス 2020 Jan.26国税組織における研修の現状と今後の展望 SPOT

元のページ  ../index.html#31

このブックを見る