ファイナンス 2020年1月号 Vol.55 No.10
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動に関連するものか否かを振り分け、関連するものを気候変動予算枠として確保するものである。2020会計年度の気候変動予算において、水道、エネルギー、食品安全等のプロジェクトが主要なものとして挙げられた。パート2 高齢化が財政政策に与える影響基調講演 吉野直行ADBI所長フォーラム2日目は、高齢化が財政政策に与える影響をテーマに議論が行われた。初めに、吉野直行ADBI所長から基調講演があり、高齢化の進展により非就業者の割合が増えることで、財政政策及び金融政策の効果が出にくくなることや、定年引上げによる高齢者の労働市場への参加の重要性が強調された。セッション1:グローバルな視点 - G20の成果議 長:高見博財務総合政策研究所副所長発表者:関根 敏隆日本銀行金融研究所長Vitor GasparIMF財政局長高齢化は、単なる人口構成の変化ではなく、財政・金融、マクロ経済に大きな影響を及ぼす問題であり、その影響の大きさに鑑み、今年のG20では、高齢化及びその政策的影響に焦点を当てた議論が行われた。世界に先駆けて急速な高齢化を経験した日本と、まだ若年層の多いアジア新興国では、現時点では取り巻く状況が大きく異なるが、日本を初めとする先進国の課題と取組みを共有し、各国がいずれ直面する高齢化に備えることが重要である。本セッションではまず、高齢化が年金・医療費の支出を増大させ、各国の財政を圧迫するという共通の課題や、税制及び社会保障制度設計にあたっては来るべき高齢化を考慮すること、高齢化そのものよりも、変化に対応しきれていない社会制度に問題があるといった、G20議論のハイライトが紹介された。続いて、IMFからは、G20メンバー国の人口や貯蓄のデータを用いて、労働人口の減少が貯蓄率の低下と生活水準の引き下げをもたらすこと、国家の財政・金融政策への課題となること、これを緩和するために労働参加率の上昇や生産性の向上等が必要であることが解説された。セッション2:アジアへのインプリケーション議 長:Chul Ju KimADBI副所長特別セッション:吉川 洋財務総合政策研究所名誉所長発表者:Todd SchneiderIMFアジア太平洋局副課長Zhu Guangyao中国国務院参事・前財政部副部長Suahasil Nazaraインドネシア財務副大臣Shamika Raviインド・ブルッキングス研究所研究部長国により段階は異なるが、アジアは、高齢化に象徴される人口動態の変化を経験している。すでに急速な高齢化に直面している国においては、高齢者に十分な支援を提供しつつ、社会保障制度の持続可能性を確保するための対策を講じる必要がある。本セッションでは、日本及び各国の課題と経験を共有し、アジアにおける人口動態の変化がもたらす財政への影響と政策措置について議論を深めた。まず、本セッションの議長であるADBIより、G20大阪サミットの政策研究グループである「Think20」で本年5月にまとめられた高齢化問題に係る提言書のハイライトが示された。各国の高齢化の度合いと課題は様々であるが、若年人口の多い途上国においても、課税ベースを広げ、来るべき高齢化を見据えた持続可能な社会保障制度の構築が重要であるとの説明があった。続いて特別セッションでは、吉川洋財務総合政策研究所名誉所長より、「日本における高齢化と財政への影響」と題し、日本の高齢化と財政の現状、社会保障支出の伸びと社会保障制度の詳細、直近の消費増税を含む改革について包括的な解説があった。議場から、日本の対GDP債務残高をどのように制御するかとい【基調講演をする吉野直行ADBI所長】19 ファイナンス 2020 Jan.SPOT

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