ファイナンス 2020年1月号 Vol.55 No.10
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強調された。質の高いインフラ投資の推進にあたり、2016年のG7伊勢志摩原則の策定を含めこれまでの日本の取組に触れたうえで、本年6月に承認されたG20原則は、ライフサイクルコストでみた経済性、環境・社会配慮、自然災害に対する強靭性の強化、及びインフラ・ガバナンスといった幅広い要素を含む重要なものであり、今後はその実施が求められるとの説明があった。IMFからは、インフラの質や効率性に関して改善すべき余地が多いことが示され、そうした背景から、IMF加盟国への支援ツールとして公共投資マネジメント評価(PIMA)を推進することの重要性が強調された。PIMAは、対象国の公共投資の計画、資金の配分、及び実施に関する制度について、債務持続可能性といったマクロ経済の側面も含めて実効性を評価し、改善の方向性を示唆するものである。セッション2:アジアにおける公的投資の効率化議 長:Odd Per BrekkIMFアジア太平洋局副局長発表者:Bruno CarrascoADBガバナンスグループチーフManal FouadIMF財政局課長Tauk Hanaインドネシア国家開発企画庁次官Mohamed Imadモルディブ国家計画開発省プロジェクト最高責任者アジアにおけるインフラ・ガバナンスの課題について、ADB及びIMFそれぞれの視点から報告があった。ADBからは、官民連携プロジェクト(PPP)において、アジア太平洋地域の途上国で過去20年あまりの間に400億ドル超相当のプロジェクトの中止があり、そうした状況が民間投資を阻害し、サービスを混乱させるとの説明があった。同様に、途上国政府の非効率な官僚組織、汚職、政治的不安定さに加え、調達手続における競争性の欠如や契約後の変更、紛争解決制度の不備などが投資を阻害する要因として挙げられた。IMFからは、政府債務と租税収入、民間投資、さらには公共投資の効率化といった、莫大なインフラ需要を満たすための各種アプローチについての研究結果が報告された。このうち、公共投資の効率化について、アジア新興国では改善の余地が大きいこと、そして、各国においては、公共投資マネジメントのとりわけ弱い部分について改革努力を注力することで、多くのリターンを得ることができる旨の説明があった。また、公共投資の効率化に関して、インドネシア及びモルディブの取組みが報告された。インドネシアは、GDPの27%に上るインフラギャップを抱えており、民間投資を積極的に呼び込む政策をとっているところ、IMFのPIMAを利用した診断と助言に基づき、プロジェクトの効率性を向上させている。モルディブにおいても、国家債務が積み上がり財政余力が限られる中で、公共投資の効率化が急務であり、IMFのPIMAを利用した診断と助言を得て改善途上にあることが報告された。ランチョンスピーチ昼食会において、鷲見周久IMFアジア太平洋地域事務所長より、「アジアにおけるIMFのキャパシティ・ディベロップメント活動」と題し、IMFが実施する技術支援のプログラムについて紹介がなされた。【基調講演をする古澤満宏IMF副専務理事】【歓迎挨拶をする遠山清彦財務副大臣】17 ファイナンス 2020 Jan.SPOT

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