ファイナンス 2020年1月号 Vol.55 No.10
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(1)財政健全化目標財政規律を維持する上で、実効的でわかりやすい財政健全化目標は欠かせない。建議でも、財政運営に当たっては、2025年度の国・地方あわせたプライマリーバランスの黒字化を実現し、同時に債務残高対GDP比を安定的に引き下げていくことを引き続き目標とし、歳出改革を進めるべきと提言している。(2)低金利環境に安住しない財政運営近年、大規模な金融緩和などを背景に低金利が継続し、名目金利が名目成長率を下回る状況にあることもあり、財政健全化は先送りして問題ないといった論調も見受けられる。建議では、こうした論調に対し、・将来にわたって名目金利が名目成長率を下回り続けるという想定をおくことはあまりに楽観的・いかに金利が成長率を下回っていても、毎年度のプライマリーバランスの赤字によって新たに追加される債務が大きければ、債務残高対GDP比の低下は望めず、債務残高対GDP比を安定的に引下げるためにはプライマリーバランスの黒字化が必要・国債金利が低金利の恩恵を享受できるのは、あくまで日本の財政への信認が大前提であり、低金利環境に安住せず歳出改革を進めるべき・「機動的な財政上の対応」を名目に、社会保障制度の持続可能性の確保という構造的な問題を放置すべきではないといったことを強調している。(3)長期推計と国民的な議論の喚起また、春の建議が取りまとめられて以降、シンクタンクにおいて、建議と同様の問題意識に立って、長期推計の取組が見られるところ、長期推計についてのシンクタンクの取組を今後も期待している。今後を見据え、堅実な経済前提に立った長期推計について、省庁横断的に取り組んでいく必要がある。シンクタンクの推計を支える観点からも、まずは、政府が行っている各種推計について、その前提やデータを相互に検証可能な形で国民に示すことが重要である。最後に、建議では、政府が2019年10月に、消費税率を10%に引き上げたことを評価したうえで、今回の消費税率の引上げは、財政と社会保障制度の持続可能性の確保に向けた長い道のりの一里塚と総括し、引き続き、財政健全化に向けて歳出と歳入の両面の改革が求められることについて国民の理解を得ることが重要と指摘している。政府としては、建議で示された認識を厳粛に受け止め、令和2年度予算編成はもとより、次の新たな時代の財政運営に取り組んでまいりたい。(財政制度等審議会財政制度分科会の審議風景) ファイナンス 2020 Jan.12財政制度等審議会「令和2年度予算の編成等に関する建議」について SPOT

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