ファイナンス 2020年1月号 Vol.55 No.10
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財政制度等審議会・財政制度分科会は、2019年10月から8回にわたって審議を行い、「令和2年度予算の編成等に関する建議」をとりまとめ、11月25日に麻生財務大臣に手交した。なお、8回の審議のうち2回については、2019年春より新たに設けた歳出改革部会において、より少ない人数で各歳出分野における予算編成上の課題について集中的に議論を行った。本建議では、令和最初の予算編成である令和2年度予算編成の指針等となるものとして、総論に加え、社会保障、地方財政をはじめとする10の歳出分野における具体的な取組が示されている。詳しい内容は建議本文をご覧いただくこととし、ここでは、特に財政総論の中でポイントとなる点をご紹介したい。1令和最初の予算編成に向けてまず、令和最初の予算編成に向けて、現状の課題が述べられている。日本の経済・財政にとっての最大の課題は、少子高齢化と現役世代の減少である。今後の経済・財政運営に当たっては、人口減少に対応し、新たな技術も生かしながら潜在成長率を引き上げる視点と、財政や社会保障制度の持続可能性を確保する視点との両方が、これまで以上に重要である。具体的には、働き方改革や生産性革命、全世代型の社会保障制度の構築が課題とされている。また、頻発する自然災害や厳しさを増す安全保障環境など、様々な不確実性の増大にも対応することが求められる。こうした現状を受け、建議では、令和2年度予算は、今後の人口減少も踏まえ潜在成長率の引上げや社会保障制度の持続可能性確保に資するものか、様々な不確実性を見据えた適切な対応となっているかといった点から、これまで以上に厳しく中身を吟味する必要があると指摘している。令和の時代に着実に財政健全化を進めていくためにも、令和最初の予算編成となる令和2年度予算は、プライマリーバランスの黒字化を目標として堅持した上で、厳しい財政規律を土台とした質の高い予算作りが求められる。その際、新経済・財政再生計画における歳出改革の「目安」に沿った予算編成を行い、着実に財政健全化を進め、2025年度の国・地方あわせたプライマリーバランス黒字化という目標の達成につなげていくべきである。2財政健全化に向けた基本的考え方続けて、財政健全化に向けた基本的考え方について整理されている。日本の財政の問題は、社会保障制度の給付と負担のアンバランスおよび諸制度の持続可能性の問題と表裏一体である。建議では、実効的な財政健全化目標の下、いつまでも低金利環境に安住することはできないという危機感をもって歳出改革を進め、真に必要な分野を見極めて重点的・効率的に資源を投入していくべきと提言している。財政制度等審議会 「令和2年度予算の編成等に関する建議」について主計局調査課長 森田 稔(左から、榊原定征会長、麻生太郎財務大臣、増田寛也会長代理)11 ファイナンス 2020 Jan.SPOT

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