2019年12月号 Vol.55 No.9
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熊本案は、国の解体工事入札手続きや工事施工が、他の震災復興工事等の影響により遅延することが予想されたため取りやめることとし、現状有姿(建物存置)による売却、平成28年度中の売買契約締結に向けて、最初からアクセル全開で走り出しました。移転予定地は、住宅地として人口が増加している東区に所在し、北・東・南の三方が道路に面していますが、この道路は普段から渋滞が問題となっておりました。特に北側の県道(維持管理等市に移管)は、熊本空港と市中心部を結ぶ幹線道路であり、新病院開院後の来院者等の車両の増加による更なる渋滞が懸念されました。そのため、渋滞解消策として、道路から病院への進入・退出スペースを道路拡幅として整備することとしました。また、南側市道を6m幅から12m幅へ拡幅するとともに、交差点改良工事を実施することとしました。この道路拡幅部分及び交差点改良工事に必要な用地については、道路法第90条2項を適用し、熊本市へ無償貸付(供用開始後譲与)することとし、平成30年2月23日に無償貸付契約を締結しました。病院敷地部分については、境界立会に始まり、測量・分筆、不動産鑑定評価や宿舎法・国有財産法等の手続き等タイトなスケジュールをこなし、無事、目標の期限である平成29年3月31日に売買契約を締結しました。5新熊本市民病院新熊本市民病院は、令和元年6月末に竣工し、これまで担ってきた小児・周産期医療を継続するとともに、救急医療、急性期医療、政策医療においても専門性の高い医療を提供する病院として、同年10月1日に開院しました。新病院は、防災拠点施設として発災後も診療を継続できるよう、建物は免震構造とし、屋上にヘリポートを備えています。また、熊本地震の教訓を踏まえ、ライフラインの二重化や、鋼板製の受水槽、2機の非常用発電機の設置に加え、食料・医療品等が備蓄され、一定期間自立的運営が可能となっています。【新市民病院概要】土地面積 21,309.34m2、駐車場 346台鉄骨造7階建て、延べ床面積 36,408.24m2診療科 31科、病床数 388床6おわりに本件処理については、財務局と熊本市の連携が功を奏したものと考えております。また、病院敷地以外にも、被災した建物の補助にあたって災害査定の立会を行ったほか、建替資金の原資の一部に財政融資資金が活用されるなど、九州財務局が一体となって取り組んだ事案でもあります。今後も当局では、地元公共団体との連携を深め、国有財産の処分等を通じて地域貢献に寄与していきたいと考えています。熊本を代表する熊本城は、平成30年に策定された「熊本城復旧基本計画」に基づき着実に復旧が進んでいます。令和2年春には、熊本城の被害状況や復旧過程を安全に観覧できる「特別見学通路」の整備が予定されています。震災から復興する熊本城・熊本県内各地の姿を見学に、是非熊本にお越しください。新熊本市民病院の断面構成旧国家公務員宿舎跡地に完成した熊本市民病院 (7階建、31診療科・388床)76 ファイナンス 2019 Dec.連載各地の話題

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